「カンガルーケア」と「完全母乳」で赤ちゃんが危ない
Newsポストセブン 2014.12.29 11:05配信(引用)
週刊ポスト誌で
「日本の出産が危ない!!」と題して5回の連載がありましたが、
2014年12月29日 インターネットでそれらの記事全文が配信され、
そしてその総括ともいえる記者の意見が配信されています。
これらの事実が暴かれても、
まだお医者さま方は立ち上がってくださらないのでしょうか?
「赤ちゃんは三日分の弁当と水筒をもって生まれてくる」という説が正しいと
立証できるお医者さまはどなたもいらっしゃらないと思いますが、
なぜ、そう高らかに謳う医師や助産師を言及しては下さらないのでしょうか?
医療界の権威を守るため、
赤ちゃんを見殺しにするおつもりですか?
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本連載では国が推奨する「危険なお産」に強く警鐘を鳴らしてきた。
久保田史郎医師はカンガルーケアや行き過ぎた完全母乳という新生児管理が引き起こす
「低血糖症」や「重症黄疸」が近年の発達障害児の増加に影響しているのではないかと問題提起する。
カンガルーケアと完全母乳を発達障害に結びつけるのは暴論だという反論もあるが、
多くの論文がその関係を示唆あるいは警告しているにもかかわらず、
調査しようとすらしないことこそ非科学的ではないか。
■病院によって発達障害発生率が違う
発達障害児が急増していることは誰も否定できない事実だ。
本連載の第1回では、
障害児の発生数について全国でも数少ない詳細な統計を取っている福岡市のデータから、
発達障害児(未就学児)の診断件数が25年前の22倍(約20人に1人)に急増しており、
同市では支援施設が足りずに増設している実態を報じた。
診断の精度や基準が変わったことを差し引いても、ここ数年〜10数年の増加は明らかだ。
発達障害児の増加は世界的な傾向でもある。
米国疾病対策センター(CDC)が2011〜2012年に行なった全米調査によると、
4歳から17歳までの子供のうち発達障害の「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」と診断された
人数が約640万人(約10人に1人)にのぼり、
とくに「高校生男子」に限ると5人に1人という高い割合だったと発表している。
発達障害には「自閉症」、知的発達の遅れを伴わない「高機能自閉症」、
読む書く計算するなどの1つが苦手な「学習障害」、
集中力を欠き多動性や衝動性が見られる「注意欠陥・多動性障害」などの分類がある。
日本では従来の障害児支援ではカバーされていなかったことから2005年に
発達障害者支援法が施行され、早期発見や支援の制度ができた。
しかし、肝心な発達障害児の推移についての全国調査は行なわれていない。
子供の発達障害には個人差が大きく、注意力や行動、読み書きの得手不得手に違いがあっても
「障害扱いするのはおかしい」という意見もあり、
学校教育の場で通常学級から排除する傾向には批判が強い。
そうした発達障害児についての教育行政上の対応についての議論はこの連載ではひとまず措きたい。
むしろ新たな視点から発達障害の原因解明が進めば、
防ぐ方法があるのではないかという問題提起に注目しているからだ。
発達障害は
いずれの症状も「中枢神経系(脳)に何らかの要因による機能不全があると推定される」
(文部科学省の報告書)とされており、原因については遺伝的要因や環境要因などの面から
医学的に多くの研究がなされているが、まだ解明されていない。
現在では「遺伝的要因説」をとる研究者が主流だが、
周産期医療の視点からの研究は世界的にもほとんどない。
取材班は、
2万人の赤ちゃんをとりあげ、新生児の体温と栄養の研究で世界的にも注目されている
久保田史郎・医師(医学博士。久保田産婦人科麻酔科医院院長)の臨床データをもとに、
カンガルーケアと完全母乳という日本で急速に普及した新生児管理法が
赤ちゃんの低血糖や低体温、重症黄疸などのリスクを高め、
危険にさらしていることに警鐘を鳴らしてきた。
久保田氏は、発達障害児の増加には、「遺伝的要因」だけではなく、
新生児の低血糖症や低体温、重症黄疸などが関係しているのではないかと問題提起し、
周産期医療の視点からもっと調査・研究がなされるべきだと指摘する。
「発達障害は脳の機能不全によるものと推定されています。
また、生まれたばかりの赤ちゃんの低血糖症や重症黄疸などが脳に障害を与えることも
医学的によく知られています。
そして日本で広く普及しているカンガルーケアや行き過ぎた完全母乳は
低血糖や重症黄疸のリスクを高める。
そうしたことを考え合わせると、
発達障害児の増加と周産期のケアとの関連を疑って研究することが
行政や医学界の責務ではないでしょうか」
事実、福岡市の発達障害児のデータでは、厚労省が1993年に完全母乳を、
2007年にカンガルーケアを推奨した後に診断件数が急増している。
また、2008年に同市こども病院の小児神経科医を中心とするチームが増加の原因を探るために
発達障害児のカルテをデータベース化して分析した調査では、
生まれた病院(個人病院)によって発達障害児の発生率が5倍も違うというデータが示されている。
こうなると「遺伝的要因」だけでは説明が難しい。
同時に、周産期医療との関連が強く疑われるのである。
■「低血糖」「黄疸」と「発達障害」の関連
本誌の問題提起について、反論がなされている。
ある完全母乳やカンガルーケア推進派の医師からは、
「発達障害との関係は医学的エビデンスがない」という批判が上がっており、
中には「論理が完全にむちゃくちゃで、煽っているだけの記事」という意見もある。
しかし、そうした批判はむしろ医学的知識が乏しいことを物語っている。
推進派が知らない(あるいは知ろうとしない)だけで、
新生児の低血糖症や重症黄疸などと脳障害、発達障害との関係については
以前から多くの研究が発表されているのである。
まず1965年にカナダの医学誌に22例の事後調査をもとに
『新生児低血糖症の神経学的および発達上の障害』という研究が報告され、
1988年の英国の権威ある医学研究所「ダン人間栄養部門」の論文
(新生児中程度低血糖症の有害な神経発達上の転帰)でも、
中程度の低血糖症を起こした新生児の661例中433人に18か月(1歳半)時点の
精神発達・運動発達に影響があったとして、
「(それまでの中程度の低血糖症は心配ないという)一般的な信念とは逆に
中程度の低血糖症は重大な神経発達上の結果をもたらすかもしれないことを示している」と指摘された。
一般的な低血糖症の症状(痙攣や無呼吸など)が見られない無症候性の低血糖症の危険性についても
数多くの研究報告がなされるようになった。
その後、MRI(核磁気共鳴画像法)やCTスキャンが普及すると、
カリフォルニア大学の研究チームによる『新生児低血糖症の画像パターン』(1998年)など、
正常に生まれた新生児が低血糖で脳にどのような損傷を受けたかについての具体的な研究も進んだ。
同報告書では
〈低血糖症が低酸素症の影響を促進するように思えるため、脳への影響は破滅的〉と指摘している。
日本でも、
鳥取大学医学部脳神経小児科の研究者が2009年に日本小児神経学会の学会誌(英文)に発表した論文で、
新生児低血糖症患者60人を調査した結果、
低血糖症が脳の病変を引き起こすケースがあることや、低酸素症や新生児痙攣、
病理学的黄疸(重症黄疸)などが低血糖脳障害を悪化させることを指摘して、
〈正常な周産期歴を伴う満期産児さえ低血糖症を発症するかもしれない。
重篤な症状が起こる前に、できるだけ早く、軽度の症状さえ、
低血糖症を検出されるための血糖値検査をうながすべきです〉と注意を促した。
これだけ多くの研究と警告を、推進派は本当に知らないのか。
そして、知りもせずに「エビデンスがない」などと言っているのか。
危険なのは低血糖症だけではない。
2010年にデンマークで発表された研究では約73万人の児童を対象に
「黄疸」と「発達障害」との関係を調査した結果、新生児期に黄疸が認められた児童は
そうでない児童より「広汎性発達障害」リスクが56%、「混合性特異的発達障害」のリスクが88%増加していた。
トルコでは脱水(高ナトリウム血症性脱水)症状を起こした母乳栄養児116人に対する6年間の追跡調査で、
半数以上で1歳以降に発達障害が認められたという研究報告(2007年)がある。
生まれたばかりの赤ちゃんの栄養不足によって起きる「低血糖症」「黄疸」「脱水」などが
脳にダメージを与え、発達障害に関係するという調査結果が
各国で報告されていることは紛れもない事実だとわかっていただけるだろう。
このリスクは取材班がことさらに煽っているものではないのだ。
次に、カンガルーケアや完全母乳が
「低血糖症」や「黄疸」「脱水」などのリスクを高めるという研究について紹介する。
山形大学発達生体防御学講座は2006年に正常新生児が行き過ぎた「完全母乳」によって
低血糖症になり、脳障害を負ったケースを報告。
“生まれたばかりの赤ちゃんには栄養が多少足りなくても大丈夫”という認識を覆した。
その新生児は生後3日目には体重が10%減り、母乳の量を調べると「にじむ程度」しかみられなかった。
報告書では〈完全母乳栄養管理は新生児期に低血糖を来たしやすいことが知られている〉と
完全母乳を行なう際には低血糖の危険性に注意することを呼びかけた。
また、富山県立中央病院の小児科医チームは高ナトリウム血症性脱水を発症した母乳栄養児に
発達障害が認められるケースが多いことに着目し、「完全母乳」と脱水症状について研究。
〈出生時から10%以上体重を減らした完全母乳栄養児の4割弱に
高ナトリウム血症性脱水が起きた〉と報告している(2010年)。
また、黄疸については久保田氏の論文に詳しい。
「重症黄疸の大きな原因は生後数日間の栄養不足と胎便排泄の遅れと考えられます。
栄養不足になると赤血球が壊れやすくなり、黄疸の元となるビリルビンが血液中に増える。
実際、重症黄疸の発生率は病院間によって大きく異なり、
多い施設では3〜5人に1人といわれますが、生後すぐに赤ちゃんを保育器で温めて
約30ccの糖水を与える当院では重症黄疸は約500人に1人です」(久保田氏)
■疑いを持つことこそ「科学的」
カンガルーケアや行き過ぎた完全母乳が「低血糖症」「黄疸」「脱水」などのリスクを高めている報告が多数あり、
「低血糖症」「黄疸」「脱水」などが赤ちゃんの脳にダメージを与えて発達障害のリスクを高めるという報告も多い。
それでもまだ、推進派はこの重大な問題提起を無視することが正義だと考えるのだろうか。
元伊万里保健所長で発達障害児の支援を担当してきた仲井宏充・医師はこう語る。
「各国の研究報告を考え合わせると、
発達障害と関係しているのではないかという疑いを持つことこそ科学的な姿勢でしょう。
各自治体では3歳児健診の時に発達障害児スクリーニングを行ないます。
その際、完全母乳やカンガルーケアの有無を調査することはできるはずですが、どの自治体も消極的です。
そもそも発達障害児の実数の公表さえしていない自治体が多いから、
関連性についての調査ができないという行政の対応の問題もある」
発達障害の専門家で、国立精神・神経医療研究センター児童・思春期精神保健研究部長の
神尾陽子氏(精神神経科)もこう指摘する。
「周産期の問題はすべての人にとって避けられるなら避けた方が望ましい。
神経発達上の重要なリスクにはなりうるが、
個人差の大きい発達障害の病因として特定される根拠としてはまだ不十分です。
発達障害の病因は遺伝と環境が複雑に関連し全貌はまだ解明されていませんが、
手がかりを見つけるための基礎研究は
それに見合った研究デザインのもとに進んでいくことが望ましいと思います」
だからこそ、久保田氏は「まず調査すべき」と主張しているのだ。
調査さえされていないのに「エビデンス(証拠)がない」と否定する姿勢こそ
科学に身を置く者としても、
生命を扱う医療者としても無責任で怠慢な意見だ。
ところが、
推進派の意見が強い日本の周産期医療界は逆に新生児期に「低血糖症」などに
陥っていたかどうかの記録を残さないことを目指している。
推進派の団体は、
独自のガイドラインで〈健康で成長が適正な児に血糖値をモニタリングする必要はなく、
親の満足感や母乳育児確立を害する可能性もある〉と指導しており、
日本の多くの産科施設は正常に生まれた赤ちゃんの血糖値を測定していない。
そして数年後に発達障害が見つかっても、
記録がないため原因特定はできない。
少なくとも、
責任を問われない病院側にとっては都合の良いガイドラインである。
より深刻な問題も起きる。
2014年3月に東京都内の総合病院で元気に生まれた赤ちゃんが「完全母乳」によって
1日半後に一時呼吸停止に陥って植物状態になる重大な事故が起きた。
泣き続けた赤ちゃんに与えられたのは必要量の10分の1以下の30ccの人工乳だけだったが、
病院ではその間、血糖値を一度も測定しておらず、
低血糖症の危険を調べることを怠っていた(連載記事【1】既報)。
久保田氏が語る。
「推進派はカンガルーケアと完全母乳は発達障害に関係ないというが、
血糖値を測定しないために無症候性の低血糖症は見逃されており、
低栄養で起きる重症黄疸も治療技術が確立していることから軽視されている。
そうした医療現場で気づかれない低血糖症などが
脳に影響を与えて発達障害などにつながっているのではないかと懸念されます」
久保田氏の問題提起に対し、発達障害児を持つある医師からは、
「私はカンガルーケアや完全母乳を実践したが、
あの出産時の飢餓状態が発達障害の原因ではないかと気になっていた。
早く検証し、そうであれば危険性を広く伝えることが医学の責任だと考えています」
という内容のメールが寄せられた。
ちなみに本連載に対する批判の中には、
「粉ミルクがなかった時代はみんな完全母乳だった。
昔はもっと発達障害が多かったことになる」という“素朴な意見”もある。
これには誤解がある。
産婆が行なっていた昔の出産・育児は、完全母乳ではあっても、
「産湯」という赤ちゃんの保温を重視する科学的にも正しい手法が取られ、
母乳が出ない母親は「もらい乳」で栄養を補うことが一般的に広く行なわれていた。
疑うなら自分の親やそうした世代に聞いてみればわかることだ。
赤ちゃんの栄養と体温管理に関する予防医学は
完全母乳とカンガルーケアの普及でむしろ後退している。
カンガルーケアと行き過ぎた完全母乳という新生児管理の問題について
一刻も早く研究、調査がなされ、
その結論が出るまでは実施も控えるべきだ。(了)」
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