SIDSとALTEの闇(1)

カンガルーケア、認識されていたリスク






2013年9月9日 NETIB News (引用)




これまで原因不明とされてきた、乳幼児突然死症候群(SIDS、sudden infant death syndrome)

および乳幼児突発性危急事態(ALTE、apparent life-threatening event)に

大きな疑問符が突きつけられている。





SIDSは、2005年3月の厚生労働省のガイドラインで、

「それまでの健康状態および既往歴から、その死亡が予測できず、睡眠中に突然死亡状態で発見され、

しかも、死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が特定されない、

原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」などと定義され、

死に至らなかったケースをALTE(SIDSニアミス)としてきた。

ただし、ALTEでも脳性マヒなど重度の障害が残る可能性がある。





9月11日、大阪地裁で、ALTEとされた新生児をめぐる訴訟の判決が下される。

新生児は2010年12月、出生直後のカンガルーケア中に心肺停止となり、

現在も重度の脳障害を抱えている。





被告病院側と産科医療補償制度の原因分析委員会は、

心肺停止の原因を「特定」する事は出来ないとし、

事故を原因不明の ALTE(SIDSニアミス)の概念に相当する事例と主張。

一方、原告側は、カンガルーケア中のうつ伏せ寝による窒息が原因と主張していた。





カンガルーケアとは、出産後すぐに新生児を母親の素肌の胸の上に抱かせる行為である。

1970年代、保育器が不足していた南米コロンビアで、

母親の体温で新生児を温めることを目的に実施され始めた。80年代より、欧米において、

NICU(新生児特定集中治療室)内で低出生体重児を対象に実施され、

ユニセフやWHOによって、主に発展途上国で拡大。





日本では90年代から欧米と同様に 低出生体重児を対象に行なわれるようになった。

そして、2007年に厚生労働省が作成した「授乳・離乳の支援ガイド」によって、

正常産児においてもカンガルーケアが推奨されるようになった。

(その後、NICUで低出生体重児に行なわれるカンガルーケアと区別し、

分娩室で正常に生まれた児(正常産児)に行なわれるケアを「早期母子接触」とした。

ただし、広くカンガルーケアの呼称が定着している。





良好な母子関係の構築を期待して、カンガルーケアが日本で広められるようになったが、

前出の厚労省ガイドが作成される以前や作成の過程で、慎重的な意見もあった。





07年1月1日発行の日産婦会報では、

長野県立こども病院の周産期母子医療センター長・新生児科部長(当時)の中村友彦医師が、

正常産児が、出生直後にカンガルーケア実施中に心肺蘇生を必要とした2症例を報告。

同報告は、06年10月から厚労省が開いていた「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)」策定に関する研究会

でも引用された。同研究会では、委員として参加した2人の産婦人科医から、

「安全性が確立されていない」「国が推奨することは時期尚早」「よほどの注意が必要」

といった意見が出されていた。





その後もカンガルーケアにおける異常事例が次々に報告された。

07年にこども未来財団は全国の「赤ちゃんにやさしい病院」(WHO・ユニセフ認定)を対象に

カンガルーケアの実態調査を行ない、42施設から回答を得た(回答率87.5%)。

その結果によると、42施設中23施設が、カンガルーケア中に重大な事態につながりかねない

「ヒヤリハット事例」を57例経験していた。内訳は、チアノーゼ9例、気道閉塞(窒息)10例、

低体温2例、低血糖2例、呼吸器疾患13例、不明12例などであった。





第28回周産期学シンポジウム2010では、信州大学医学部、長野県立こども病院、

大阪大学大学院医学系研究科の医師らが、全国の産科施設に実施したアンケート結果

(有効回答率40.7%、1,124施設)を発表した。そのなかで、「STS(早期母子接触)導入後に

児の状態が悪化したなどの理由でSTSを中断した経験がある」との回答は40%以上。

中断の理由は、「児のチアノーゼの増強」が200件以上と最も多く、「児が冷たくなってきた」約80件、

「SpO2(血液中の酸素飽和度)が上昇しない」約40件、「呼吸をしていない」約30件と続いた。



【山下 康太】

(2)へ続く


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参照;

カンガルーケア中の児の呼吸停止事例

ははのくのう 37. 示談成立までの歩み その14 長崎県医師会からの回答書