示談成立までの歩み その14「長崎県医師会からの回答書」




浩太郎が亡くなっても、

毎日3時に浩太郎の面会に行く生活に身体が慣れてきていたせいか、

常に焦燥感に駆られ、ふと気付くと浩太郎がいないことを

思い知らされるという日々が続きました。

けれど、今までは浩太郎が生きていても一緒に居られなかった分、

今はいつも一緒にいる気がして、七七日忌に納骨するまでは、

浩太郎の祭壇にいつも語りかけ、家でゆっくり浩太郎と過ごしました。





私達は浩太郎が事故に遭ったことで、

たくさんのことを教わりました。

その教わったことを世の中に伝えることが、私の使命であると思い、

私は「ははのくのう」を書き続けました。

それが浩太郎の母としてできる唯一のことと思ったのです。





事故を起こした産科医院の院長と師長からは、

葬儀の際に参列したいとの申し出を受けましたが、

私達が平静を保っていられないと思い、お断りしました。

後に浩太郎の祭壇にお線香をあげに来られました。

いい機会なので、その後の状況を聞こうとお話ししましたが、

やはり、事故の原因究明をされるような気配はなく、

医療従事者ご自身が医療界の何が問題なのかを

認識されていないのだなあぁと感じました。





長崎新聞や産経新聞の記者の方もお参りに来てくださり、

産経新聞の方は浩太郎が亡くなったことを

記事にしてくださいました。

長崎「カンガルーケア」中事故 1歳2カ月赤ちゃん逝く



2011年3月23日、

「刑事告訴について」や「出産施設について」を書き上げて、

弁護士の先生に目を通していただいた時、

前回お伝えしております文書についての回答書を頂きました。





助産師については、

「今後も当職(産科医院の弁護士)を通じて連絡・アドバイスが可能ですが、

助産師本人の代理人ではないため、すべてについて

助産師やその両親と協議しながら事を進めてきたし、

今後もその進め方をするしかない、

また、助産師が直接謝罪ができるまでに回復する見込み

及び見込み期間の心療内科への確認は、

当職において「心療内科に直接問い合わせること」は「代理権がない」

という立場上非常に難しいものと思料します。」というお返事でした。





県看護協会への報告・啓蒙要請の具体的な活動については、

「長崎県助産師会において、

カンガルーケアの注意喚起・啓蒙を実施していただくべく、

日本産婦人科医会長崎県支部を通じて、その依頼を行ないました、

2011年3月18日 長崎県助産師会理事会

2011年5月7日 長崎県助産師会総会及び研修会

2011年9月11日 長崎県助産師会研修会

においてカンガルーケアに関する本件事故の発生を報告して

注意喚起・事故防止啓蒙を行います。」

とのことでした。





長崎県医師会の「関係役員に配布し、検討する」の

具体的進行状況の確認については、

「長崎県医師会では関係役員で検討を行い、

長崎県医師会医療安全管理対策講習会を

2011年2月5日 県北地区 2月12日 長崎地区で開催し、

その中でカンガルーケアについて注意喚起を行いました。」とのことでした。





ご努力は認めますが、

産科医の皆さんも助産師の皆さんも、

あくまでもカンガルーケアの最中に

赤ちゃんの呼吸が止まることがあるという前提の下での注意喚起であり、

誰一人として、赤ちゃんの呼吸がなぜ止まるのかと疑問に思い、

追究しようとする方はおられないのだろうか?と落胆しました。





私達のHPなど、医療界の方々にとっては、何の効果も無いのだなと痛感しました。





日本医師会の対応については、

「現在までのところ

日本医師会としての行動は特にとられていません。

日本医師会としては、密接な関係にある

全国の産婦人科医師で組織する日本産婦人科医会における対応が

効果的であり望ましいとの考えであります。

日本産婦人科医会では、会報(2010年4月号)に

「カンガルーケアと医療安全」を掲載し、

全国約1万人の会員に対し、注意喚起しており、

又、同長崎県支部と致しましても、

「出生直後の新生児ケアについて」の通達を会員に行い

注意喚起していることはご報告したとおりです。」とのこと。





「出生直後の新生児ケアについて」は2010年4月に出されたもので、

新生児蘇生術の講習を促すものでした。

(参照 7.新生児蘇生術の講習について)





やはり、日本医師会というのは、

単なる利益誘導団体であって、

医師同士で協力し合って

原因究明しようなどということはされないのだなと

再認識させられました。





そして最後にとんでもないことが書かれていました。





「なお、日本医師会常任理事の長崎市内の産婦人科医師が

2011年4月から日本産婦人科医会副会長に就任することを機会として

今後とも啓発活動を行なっていくとのことでありますことを申し添えます」

とあるのです。





この医師は2007年3月に発表された

厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」策定の構成員で、

その当時、日本医師会の常任理事であられました。

つまり、厚生労働省も、日本医師会も

浩太郎の事故において、何の責任もないかのように語っていますが、

2007年の時点で、カンガルーケア中に

赤ちゃんの呼吸停止事故が起こっていることをご存知で、

このガイドの中でも、「特に出産直後については、

医療従事者が関わるなかで

安全性に配慮した支援を行うこと」が明記されていて、

カンガルーケアは医療従事者不在の下で

行なわれるべきではないことを認識していたのです。





2007年1月31日 女性と仕事の未来館で、厚生労働省の

第4回「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)」

策定に関する研究会が行なわれています。

委員は上記の産婦人科医師を含め11名、

その内、助産師1名で構成されていて、

事務局は保健所の職員5名です。議事録もしっかり残っています。

この研究会の中で産科医の方々は

2007年1月の医会報で
カンガルーケアに対する警鐘 の記事が出ていることを報告し、





カンガルーケアの安全性・有効性が確立されていないのに、

この「授乳・離乳の支援ガイド」でカンガルーケアを推奨することは、

国がカンガルーケアにお墨付きを出したことと解釈されるので、

時期尚早として、反対意見を述べられています。





それに対して、強行に推し進めたのは助産師です。





「赤ちゃんが呼吸状態に異常を起こすという症例も報告を受けていますが、

カンガルーケアをすることによって、赤ちゃんがとても安心したり、

体温の上昇につながったりというメリットもとても大きいので、

肌と肌の触れ合いの部分で、

言葉の使い方を変えて載せられるとよいのではないかと思います。」

と述べているのです。



みなさん、これをどう思われますか?



助産師にとっては、

科学的エビデンスもないカンガルーケアが

赤ちゃんの呼吸停止よりも大事なのでしょうか?



これが助産師の実態です。

科学的エビデンスの無い“赤ちゃんは三日分の水筒と弁当を持って生まれてくる”

という説を唱えているのは新生児科医師です。



そして何より驚くべきは、

厚生労働省の責任逃れをするために、

言葉の使い方を変えて、カンガルーケアを推し進めたという事実です。



私達はこの事実を浩太郎の事故直後2010年1月には、

久保田医師から議事録を送付して頂き、既に知らされていました。

だから、同様にこの事実をご存知だったrkb福岡放送、

産経新聞、朝日新聞の取材を受けたのです。

その前後、久保田医師を取材された新聞社、

テレビ放送局の方々もこの事実をご存知のはずです。





ですから、私達の事故が2010年3月15日にTBSでテレビ放送された時、

厚生労働省が「カンガルーケアとの因果関係がはっきりしていない」と

いかにも厚生労働省に責任はないかのようなコメントを出した時、

私達がどれほど驚き、日本の医療に恐怖を抱いたか、

お分かりになっていただけるでしょうか?





そしてさらに、2010年4月6日の長崎県医師会の

「出生直後の新生児ケアについて」というお知らせでも、私達は落胆しました。





頼みの綱は、この「授乳・離乳の支援ガイド」策定の構成員で、

当時、日本医師会常任理事であられる

長崎市内の産婦人科医師だったのです。





2010年4月17日に久保田産婦人科医院を訪ねた時、

久保田医師は私が元気な赤ちゃんを産んだのに、

授乳の喜びを得られなかったことに心を痛められ、

必ずまた妊娠するからと元気づけてくださり、

その時は長崎のこの産科医院を受診するように、

必ず力になってくださるはずだからと助言して下さっていました。





ところが、力になってくださるどころか、

私達の事故が産科医から長崎県医師会を通して

賠償責任審査会に申請されても何の働きかけもしてくれず、

長崎県医師会はあんなクレームを私達に出してきたのです。

(参照 23.示談成立までの歩み その5「クレーム」)



この医師は長崎市内の医師ですから、

当然、長崎県医師会に属しているものと思われます。

ご自身はカンガルーケア中に事故が起こっているのもご存知で、

助産師が強行にカンガルーケアを推し進めたのもご存知で、

厚生労働省が責任逃れをしていたこともご存知でした。

もちろん久保田医師の学説もご存知でした。





それなのに、再発防止に努めるどころか、口を閉ざし、

そして、平然と2011年4月から日本産婦人科医会副会長に就任し、

これもまた平然と、それを機会に

今後も啓発活動を続けていくと述べているのです。





この事実を長崎県医師会の方はご存知なのでしょうか?

知っていて何にも思われないのでしょうか?

それが“医療界の文化”で、今更驚くことでもないのでしょうか?





私は、さらに、長崎では、どこで出産しても

赤ちゃんの呼吸停止を未然に防いでくれる所はないのではないか?

と不安でいっぱいになりました。





私が、なぜ、「事故の詳細」を明らかにし、

「ははのくのう」を書いたのか、

お分かりになっていただけたでしょうか?





命を預かる助産師、医師、日本医師会、そして厚生労働省が、

カンガルーケア中に赤ちゃんの呼吸が止まるという事実を知っていながら、

ご自分達の責任逃れをするために、言い訳ばかりを並び立てられ

どなたも赤ちゃんの命を守ろうとはしてくださらなかったからです。