追 記




医療事故裁判について





皆さんには、医療事故裁判が、

医療側と患者側のどちらに責任があるか、 という争いに見えるでしょうか?

少なくとも、このカンガルーケアや母子同室・完全母乳哺育に関する

医療事故裁判では、私には、厚生労働省を含めた医療界内部の

利権獲得争いや権力争いにしか見えません。




原告は患者家族ですが、

もちろん患者側は医療に素人ですので、

自分で訴状を書くのは難しく、弁護士に委任します。

弁護士も医療に素人ですので、

当然、医師の意見を求めるわけですから、

患者側の言い分を支持する医師もいらっしゃるということです。




こうたろうの事故でもそうですが、

カンガルーケアや母子同室・完全母乳哺育下での

赤ちゃんの呼吸停止の原因を、医療界側は

「原因がわからない」から「乳幼児突然死症候群」と仰いました。




私達は“乳幼児突然死症候群”という原因不明の事象があるのなら、

当然、そのリスクを患者側に事前に説明し、

もしもの場合に備えるべきだったとして、

病院側の「母子管理の責任」を問うているのですが、



参照:「ははのくのう 27.示談成立までの歩み その8 助産師の任務」




しかし、私は、本来、

何か原因不明の事象が起きた時点で、

それを医療側が真摯に受け止め、医療界内部で

原因究明、再発防止に取り組むべきものだと思っています。




2012年10月17日 日本周産期・新生児医学会など8つもの団体から

ガイドラインが出されました。

「早期母子接触(いわゆるカンガルーケア)」の留意点

(日本周産期・新生児医学会HPより引用)


これは“出産直後の赤ちゃんは呼吸状態が不安定である”という

医師・助産師・看護師にとっては当たり前のことを再認識した上で、

カンガルーケアをするしないに関わらず、

出産直後の母子の管理体制について示したガイドラインだと思います。




この時点で、これまでにもカンガルーケア中の事故については

医師や助産師から事例報告や論文が

発表されているのにも関わらず、

参照:カンガルーケア中の児の呼吸停止事例

カンガルーケア中に赤ちゃんの呼吸がなぜ止まるのか、

医療界側で議論された気配はないように感じます。




カンガルーケア推進派による

カンガルーケア中の赤ちゃんの呼吸停止はSIDS(乳幼児突然死症候群)、

あるいはALTE(突発性緊急事態)という診断のもと、

生後30分以内に、赤ちゃんにとって寒い分娩室で、

お母さんの出ないおっぱいを吸わせる(実質、何も与えない)という

カンガルーケアについては何の疑問視もせず、

名称を早期母子接触と変えて、しかも、

実施する際には母親に同意書を書かせるという

なんとも医療側に都合のいいガイドラインに思えますが、

皆さんにはどう映るでしょうか?




同意書を書かせるも何も、

カンガルーケアを勧めているのは医師や助産師であり、

母親が医療サイド以外からの情報を得て、

カンガルーケアを希望しているわけではないのにです。




しかし、このガイドラインが発表された時点で、

日本で奇妙な形に確立されたカンガルーケア(STS)を実施する場合には、

医療従事者による人的・機器的観察が必須となりました。

参照:ブログ紹介 早期母子接触(いわゆるカンガルーケア)について




そして、2014年3月、2009年11月に起きた

国立病院機構九州医療センターでのカンガルーケア訴訟で、

「病院側に経過観察の義務があった」との判決が

下されたのですが、九州医療センターは

「医療に不可能を強いるもの」として控訴されています。

参照:カンガルーケア訴訟 原告勝訴




ガイドラインが実施不可能なら、学会に対して抗議されるべきではないでしょうか?




医療界御自身で出産直後の母子の経過観察は必須とのガイドラインを

出しておきながら、それが不可能と仰るのですから、

まさに医療界の内部抗争だと、私は思います。




ところが、2014年10月31日

2010年12月に起きた大阪のカンガルーケア訴訟では、

「STSにおける監視体制は2008年から2010年にかけて全国の病・医院で

急速に強化されたものの,女児の事故が起きた2010年12月時点では

経過観察を実施すべき注意義務があったとまではいえない」

として、患者側の訴えが棄却されました。

引用:大阪の早期母子接触訴訟、高裁も棄却




なんとも医療側に甘い判決ではないでしょうか?




医療事故裁判というのは、

何を争点にするかによって、訴状の書き方、答弁の書き方が

違ってくるものだと思います。

そして、それぞれの側の医師から出された鑑定書を見て、

裁判官が判断するのだと思いますが・・・。




2013年9月 一審の判決では「母親の責任」とも取れる内容で、

カンガルーケア(STS)実施において病院側が適正に実施していたかどうか

については問題にされませんでした。

参照:NETIB News SIDSとALTEの闇(1)〜(3)




つまり、カンガルーケア推進派は、2013年9月の時点では、

2012年にガイドラインが出ているにも関わらず、

カンガルーケアは単なる授乳、「母と子の生理的な行為」なので

経過観察義務はないと答弁しているのに、

2014年には、カンガルーケアの危険性を認めた上で、

事故当時(2010年12月)には経過観察できる水準の病院ではなかった

という答弁に変わっているということではないでしょうか?




その時の情勢によって、主張を変えていらっしゃるのでしょうか?




うつ伏せ寝による窒息だとか、

カンガルーケアによる呼吸停止だとかは、

医療界内部で、御自身方で原因究明することであって、

呼吸停止の原因を患者家族が訴えた裁判で、

争点にするべきものではないと私は思います。




そもそも うつ伏せ寝中の赤ちゃんの死亡での裁判も起こっているし、

カンガルーケア中の赤ちゃんの呼吸停止も全国報道されているのですから、

真っ当な医療従事者なら、

新聞やテレビニュースもご覧になるでしょうし、

医会報や医学雑誌も当然ご覧になり、リスクを認識し、

医療に従事していて然るべきものだと思います。




ですが、裁判官が、

産科医療補償制度の原因分析委員会の錚々たるメンバーが名を連ねている

病院側の鑑定書と、一介の開業医の意見に基づいた患者側の鑑定書の

どちらを重視するかは、明白ではないでしょうか?




“出産直後の赤ちゃんは呼吸状態が不安定である”という

医師・助産師・看護師にとっては当たり前の視点に立ち、

母子の様子を気にかけていたかどうか、

医療従事者としての責任は問われないのですね。

参照:「ははのくのう」4.助産師は看護師ではないのですか?

5.水も飲めない分娩

6.勤務医に責任はないのでしょうか?




私達は、命を預かる医療従事者に対して、高い報酬を税金で払っていますが、

その医療従事者が、患者の命を第一に優先せず、

何に重きを置くかという医療に対する姿勢は、

責任を問われないのが、

日本の医療の現状なのだと思います。




表面上は患者側の敗訴ですが、

多くの赤ちゃんと赤ちゃんの家族の犠牲の上に、やっと、

カンガルーケア推進派は、日本独特な「カンガルーケア」の危険性を

認めた形になったのではないでしょうか?




カンガルーケアや母子同室・完全母乳哺育下で

赤ちゃんが呼吸停止する事故は、

2010年以降も止まることはありませんでした。




判決は、過去の判例を重視されるようですが、

果たして、2011年以降に発生した事故は

病院側に経過観察義務があったと認められるのでしょうか?




では、2010年以前のものはどうなるのでしょう?

大学病院や国立病院で発生したものは病院側の非が認められて、

それ以外の病院では認められないのでしょうか?




それともまた、新たな鑑定書が用意されているのでしょうか?







参照:「ははのくのう」16.刑事告訴について(その1)

17.刑事告訴について(その2)