口外禁止条項
2010年12月3日、助産師に示談書に調印させることができたので、
掲載を控えるように言われていた「ははのくのう」に載せる文書、
「3.助産師の実態」
「4.助産師は看護師ではないのですか?」
「5.水も飲めない分娩」
を急いで掲載しました。
それまでにrkb福岡放送から、
カンガルーケアの危険性についての特別番組を
年内に放送する予定だと聞いていたので、
その番組が放送になれば、
このHPもたくさんの人々に見てもらえて、
カンガルーケア・完全母乳・母子同室の危険性を
少しでも世の中に伝えることができ、
出産直後の母子の管理体制を見直してもらえると思ったのです。
そしてそれまでに書き溜めてきた文章も急いで書き上げ、
「6.勤務医に責任はないのでしょうか?」
「7.新生児蘇生術の講習について」
「8.なぜ久保田医師の学説は認められないのでしょうか?」
「9.賠償責任審査会とは?」
を12月23日までには掲載いたしました。
もちろん弁護士の先生に目を通していただきましたが、
「示談成立までの歩み」をご覧になれば、
その時点では掲載できなかったことが
多々あることはお分かりになると思います。
「9.賠償責任審査会とは?」の中で、
示談書の中の文言の一部を掲載しています。
通常、示談書の中には、「口外禁止条項」
という文言が記載されていて、
その内容など公表できないように制約をもたせるらしいのですが、
私達の示談書にはその文言がなかったと
弁護士の先生から教えて頂きました。
医療事故の被害に遭った者は、
どれだけ苦しめられなければならないのでしょうか!
医療従事者側に有責と認められても公表できない、
被害者が敗訴すれば尚更のこと、
もちろん医療事故かそうでないかと疑問をもっても
その事実が明らかになることはありません。
医療従事者は名誉毀損を盾に医療事故を公表しない、
被害者も公表したくても「口外禁止条項」があるから公表できない、
公表されないから、
追究された膨大なデータも活用されることもなく、
医療体制が改善されることもなく、
信じられないことに、人の命は、
人の命を預かる医療従事者から無駄に奪われていきます。
さらに
医療の良心を守る会
というHPでとんでもない訴訟を見つけました。
医療事故の被害者の遺族に真実を明かし、
謝罪したいと勇気を持って行動した医師を
病院側が名誉毀損で訴えたというものです。
http://ryousin.web.fc2.com/2.html
私は目を疑いました。
意味がわからず、理解するのに少し時間がかかりました。
そういうことだったのか!?
私達の事故での「説明会」で、(参照 その12)
産科医院の院長が何も言わなかったことの合点がいった気がしました。
今後も産科医院を続けていくためには、
「三日分の弁当説」を唱える医師や助産師を容認している医療界に
楯突くわけにはいかなかった、ということでしょうか?
大学病院の隠蔽体質に抗した医師に対する組織的な報復
その大学病院の主張がまかり通る現実
皆さんはこの医療界の現実を、どう思われますか?
医療従事者の方々は、
これが医療界の“文化”だと肯定されますか?
病院の収益を守り、医療従事者の名誉を守ろうと、
頑なに医療ミスを認めず、
名誉毀損を盾に、口外禁止条項まで設けて、その事実を隠蔽することが、
医療の発展のために“医療従事者を守ること”と言えるでしょうか?
医療従事者を守っているつもりが、
逆に医療従事者の高慢な意識を増長させ、
医療従事者としての崇高な精神を萎縮させて、
医療の発展を阻害しているのではないでしょうか?
今回、浩太郎の事故を起こした産科医院の院長を、
皆さんは、どう思われますか?
愚か者だと非難されますか?
医療従事者の方々は、運が悪かったとこの産科医院を擁護されますか?
私達はこの産科医院だけの問題ではないと思っています。
確かにこの産科医院が安全管理能力や
危機管理能力に欠けていたことは事実です。
ですが、この産科医院だけでしょうか?
厚生労働省の「赤ちゃんに優しい病院」の称号をもらい、
看護師内診問題で産科医と同等の地位を確立した
助産師に母子の管理を委ねていました。
夜勤体制に人手を増員していないのは、
40年も前から、どの産科医院でも同じではないでしょうか?
浩太郎と同じようなカンガルーケア中・完全母乳・
母子同室などで事故を起こした病院側が
事故の責任を認めないことに比べれば、
この産科医院の院長は誠実な医師と言えると思います。
ですが、この産科医院の院長を変貌させたものは何でしょうか?
事故直後は「申し訳ない」と非を認めていても、
2010年1月9日には態度を翻し、
(参照 事故の詳細 その6)
浩太郎が呼吸をしているかどうかの
確認をしたとの新しいカルテまで作成し、
乳幼児突然死症候群を証明しようとしたのでしょうが、
さらに「正常だったからほったらかしにした」と、
管理体制が悪かったことをかえって明確にし、墓穴を掘っています。
助産師が私を睨みつけていたのも、
医師が乳幼児突然死症候群を主張していることをいいことに、
助産師としての任務を怠ったことを反省するどころか、
「不可抗力だったのよ!
できる限りのことはしたって言ってるじゃない!」と、
私達のことを「難癖をつけている」と言わんばかりだったのでしょう。
裁判を起こされたところで、
医師賠償責任保険に加入しているので自分達の懐が痛むことはないし、
嘘をついてカルテを改ざんしてもそれが立証されることはない、
投票獲得数で政財界や役人にも有無を言わせぬ影響力をもった
日本医師会がバックについているのですから、
乳幼児突然死症候群、さらにはALTE(突発性緊急事態)を理由に
医療従事者側に非はないとタカをくくっていたのだと思います。
ところが、テレビや新聞の記者が来て、慌てふためいた、
しかもそれが報道された、
医師としてカンガルーケア中の事故情報を
知らなかったと言えるわけが無く、
無言を通すしかできなかったのではないでしょうか?
浩太郎が搬送された先の市民病院も公表の義務のある公的機関ですが、
事故の責任を問われる訳でもないのに、
浩太郎の症状についての取材にさえ応じてくれませんでした。
私達は浩太郎のカルテを市民病院の医師に請求したのですが、
「安易に医療事故と言わないで」と、
病院の医事に申し込む様にとカルテ請求の仕方を
説明されながら言われましたし、
「たった浩太郎君一人のことで、カンガルーケアを悪く言ってほしくない」
とまで言われました。
長崎県医師会も事故が全国報道されたので黙っている訳にはいかず、
県内の産科医や助産師向けに「お知らせ」を出しましたが、
これでは赤ちゃんの呼吸が止まることを未然に防ぐことはできませんから、
単なる体裁を整えただけといえるのではないでしょうか?
(参照 7.新生児蘇生術の講習について)
そして、夫の事故調査委員会への不満
それに対する医師会のクレーム
(参照 その5)
なぜ浩太郎が救急搬送されることになったのか
説明してほしいという私達の要望に
産科医院長とその弁護士は相当と認識していたようですが、
それを難航させたのは、
長崎県医師会からのクレーム、
助産師の責任逃れ、それを擁護する他のスタッフ達です。
HPの「らくがき帳」をご覧になれば、
誰が、何の為に、スタッフを炊きつけ、
院長を責めたのか、お分かりになると思います。
あげく行われた「説明会」でも
なぜ浩太郎が救急搬送されることになったのか
医師の口から明らかにされることはありませんでした。
説明会の折、産科医院は分娩を縮小している
とのことでしたが、今はもう行っていません。
患者が減ったからではありません。
スタッフ達が別の病院に移り、実質的にできなくなったのです。
頑なに医療事故を公開せず、
事故を起こした医療従事者を追及しないことに、
医療を発展させるためのどんな利点があるというのでしょうか?
この一連の医療従事者側の対応を、
他の医療従事者の方々は
同じ事が自分の身に起きた時、
同じ行動をとらないと断言できますか?
ご自分達の良かれと思って行ってきたことに
疑問を抱き、何が悪かったのかと
立ち止まって考えることができるでしょうか?
私の目には、
医者の診断に間違いはないという高慢と
関わりたくないという保身しか映りません。
事故を受けて、
医療従事者の方々が議論するのは、
医療事故かそうでないか、医療側に非があるか無いかだけであって、
どうやって赤ちゃんの命を救うかではありませんでした。
とられた対策は、
赤ちゃんの呼吸が止まったとき、
医療従事者側の非を問われないように、
人的・機器的監視を強化するものとしか思えませんし、
母と子の自然な営みと称するカンガルーケアを
自然とは真逆の赤ちゃんにモニターをつけてまで行うばかばかしさに
公の場で意を唱えてくださった医療従事者は
rkb福岡放送で紹介された合阪医師と久保田医師以外誰もいませんでした。
ほんの少しでも、
医師自身で「何の問題もない」と
診断された正常成熟新生児の呼吸がなぜ止まったのか?
と疑問に思われたでしょうか?
二度と同じ過ちを犯さないために、一刻も早く事故を公開して、
“何よりも先に人の命を守ろう”と思われたでしょうか?
“何が問題だったのか?”とご自分達の行いに疑問を持たれたでしょうか?
事故があっても、“医療は難しい”を理由に、
医療側への何の疑問も抱かず、
事故は起こさないように気をつけているから
防止できるという過信こそが
“医療従事者のすることに間違いは無いという驕りである”
ことに気づいていただけないでしょうか?
名誉毀損で訴えられた医師や
医療界の隠蔽体質と闘う医師が特別な医師でしょうか?
医師として、人として、
当たり前のことをされているだけではないでしょうか?
一人の医師が自らの保身よりも、
医師として、人としての精神を貫き通し起こした行動が、
ジャーナリストの心を打ち、
少しずつ少しずつ人の心に伝わり、その医師を支え、社会を動かし、
産科医療補償制度へ結びついたのではないでしょうか?
不当な判決に異議を唱えてきてくださった方々の声が、社会を動かし、
裁判員裁判制度が導入されたのではないでしょうか?
始まりは何でも一人の小さな力なのではないでしょうか?
大きな力に飲み込まれてしまうのは、
自分の精神が欲に捕らわれていることに気づかず、
医療界の隠蔽体質を不動なものとし、
一人の力では何もできないと、
自分を正当化しているだけではないでしょうか?
できないことの理由を挙げるのは簡単です。
ですが、それが正しい理由でしょうか?
医療事故が、名誉毀損を盾に、口外禁止条項を制約に、
公表されないことが当たり前になっている社会が正しいでしょうか?
それを正当化してしまえば、
社会は、何が大切なのかを見失ってしまうのではないでしょうか?
公平・公正を掲げるジャーナリズムが、
圧力に屈することを正当な理由かの如く言い訳することが正しいことでしょうか?
視聴率、購読数に目がくらんでいるだけではないでしょうか?
こういう現実があるという事実を、
世の中に問題提起することもジャーナリズムの
役割なのではないでしょうか?
浩太郎の祈りを、
九州医療センターの真愛ちゃんの思いを、
rkb福岡放送で紹介された歌音ちゃん、生恵ちゃんのもの言えぬ声を、
聞いていただけませんか?
浩太郎が生きていたら、
病院にお世話になっている以上
たとえ示談書に口外禁止条項がなくても、
私達はこんなにあからさまに事実を公表できなかったでしょう。
このHPは命を呈した浩太郎の訴えです。