産科医療補償制度について




『11.未だ原因はわからないのでしょうか?』 を書き上げて、弁護士の先生に目を通して頂いた時、

日本医師会は単なる医師の集合会であって、

医師間で協力し合って事故を調査したり、

医師個人に何かを強制したりする

組織ではないと釘をさされました。





ですが、そういう働きを持たせるべきじゃないか、

という声はある、増加する医療事故訴訟に対して、

公的な医療事故調査委員会や

医療事故裁判制度を作ろうという動きもある、

真実を明らかにさせるために、

医療従事者の責任を問わないようにしたらどうかとか、

被害者の苦痛を軽減するために

無過失補償をしようという動きもあり、

それらたくさんの問題を受けて、

2009年1月から試験的に始まったのが、

産科医療補償制度だと言われました。





私達が、医療事故に遭うまで、

世の中の問題点に気づいていなかった

ということでもありますが…。





そういえば、医師会からのクレームがきた時、(参照 その5)

「医師会は単なる利益誘導団体ですよ!」

と、友人からメールをもらったことがありました。

世間では、医師会がそのような存在であることは常識だったのですね。





また、インターネットの「医療事故訴訟」で検索して、

日本弁護士連合会が2007年3月16日付けで提出してある意見書

「医療事故無過失補償制度」の創設と基本的な枠組みに関する意見書

も見つけました。

私はこれを読んで、

弁護士の先生方が医療事故の

被害者の気持ちを理解してくださっていることに、

とてもありがたく、涙が出てきましたが、

果たして医療従事者の方々が

どれだけこの意見書をご存知なのだろうか?

とも思いました。





産科医療補償制度

私達がこの言葉を初めて耳にしたのは、

浩太郎の事故の後、2010年1月5日、

新聞社の取材を受けた際でした。

家に帰って出産育児一時金出産費用支払い領収書を見ると、

確かに3万円を支払ったことになっているではありませんか!

そういえば、出産前、渡された書類に

サインしたような覚えはありましたが、

産科医院側から特に説明されたことはありませんでした。





早速、インターネットで調べてみると、

この制度は医療者の過失の有無にかかわらず、

被害者に損害賠償されること、

公表すること、が義務付けられています。

まだ始まって間もなく、

適用範囲も定かではないということで、

私達は、事故から1ヵ月後の

2010年1月9日、産科医院を訪れた時、

この制度の適用申請を申し入れました。





ですが、「分娩は問題なかったので適用外だと思う」

と言われましたので、それは運営組織が審査することだと思うので、

とにかく申請して、その結果を報告してくれるようにと言いましたが、

その後、産科医院から何の連絡もありませんでした。





別の新聞社の方からは、

「学術的には分娩とは分娩後2時間までをいう」と教えて頂き、

夫は、その運営組織に浩太郎の事例は当てはまらないのかと

何度もメールで問い合わせをしましたが、

「わからない…」とか、「はっきりしていない…」とか、

担当者によって回答がさまざまで、

明確な回答は頂けませんでした。





また、どんな事例があるのかと検索しても公表はされていませんでした。





適用申請も、生後6ヶ月を過ぎないとできないらしく、

事故を起こした産科医院からの回答を待ちましたが、

6ヶ月を過ぎても何の返答もありませんでした。





再発防止 原因究明 公表の義務 無過失補償 

大前提をかかげ開始された制度ですが、

さまざまな問題をかかえたままで開始されているようです。

産科医療補償制度

問題山積みのままスタート!(TBS)

ロハス・メディカル・ブログ

問題の一つに、

「対象となる赤ちゃんの条件範囲が狭すぎる」

ことが挙げられています。



赤ちゃんが死産、または6ヶ月未満で死亡すれば、適用外です。



2010年6月に出産時の事故に遭われた方は、

その運営組織に問い合わせたところ、

「赤ちゃんが一秒でも6カ月に満たなければ監査いたしません」

との冷たい言葉を頂いたそうです。





それを聞いて、私は浩太郎の事故で

賠償責任審査会の調査結果報告が、

浩太郎が6ヶ月を過ぎてだったことに思い当たり、

もしも浩太郎が6ヶ月未満で亡くなっていたら?

「有責」との結果が出たのかどうか?

浩太郎が6ヶ月で亡くなるかどうか、

その結果を見てからの判断ではなかったのかと恐ろしくなりました。





2010年10月4日、

この制度が開始されてからの記事が西日本新聞に掲載されました。

お産事故補償 周知が課題

記事の中で、

「制度について産科医以外の認知度が十分でない可能性があると分析」



とありますが、

事故を起こした産科医側から、

どれ程、患者に産科医療補償制度を知らされているのでしょうか?





たとえ産科医が制度を熟知していても、

事故を起こした産科医側から、

患者に知らされることはまずあり得ないと思います。

私達がそうでした。





当然、事故を起こした産科医院側は

事故を表ざたにしたくないと思うのではないでしょうか?



『認定申請期間は満一歳から。

専門の医師から重度脳性まひと診断された場合は6カ月から。





補償請求者(私たち)→相手病院に認定申請書類提出→

認定請求書、診療録、助産碌、検査データ、出産証明書、

保障対象基準を満たしていることを証明する書類、

医師賠償責任保険の保険証券の写しを運営組織に提出

その後審査になるようです。』





これは先程の出産時の事故に遭われた方から、

最近、教えてもらったことで

浩太郎にかかわってくださった小児科医師や看護師、保健師から

教えてもらったことは何一つありません。





私達は事故直後に、産科医院に認定申請申し込みをしていますし、

浩太郎が6ヶ月を過ぎたとき、小児科医から

脳原生運動機能障害・呼吸器機能障害の

症状固定と診断されていますが、

その産科医療補償制度の「認定申請書類」を、

私達からの再三の申し入れで、浩太郎が1歳を迎える頃やっと、

産科医院側から、

「申請は被害者がするもの」

と渡されたことになります。(参照 その9)





私達は自分で適用申請の申し入れをしましたが、

これは非常に珍しいケースで、

患者側が医療従事者側に疑問を抱いても、

産科医自身が言わない限り、

医療事故だと気づかないことがほとんどだと思います。





たとえ小児科医や保健師から教えられたとしても、

先ず、最初の申請書は事故を起こした産科医院自らが

産科医療補償制度の運営組織に

申し出ないと手に入らないそうです。









『自分で申請書類を取り寄せて

6ヶ月になったら即提出しようとしましたが、

なにを言ってもだめでした。

産科医療補償制度の審査請求? 

調べてくださいっていう申し込みは

患者側からはできないってことも酷いと思いました。

事故にあった側から病院側に頼みにくいってこと、

どうしてわかんないのかな?』







これも出産時の事故に遭われた方の言葉です。





産科医療補償制度が試験的に始められた制度であって、

これが日本弁護士連合会の意見書の通り、

将来、全ての医療事故に対して適用されるとすれば、

その場合の改善点が、浮き彫りに

なってきたのではないでしょうか?





確かに、産科医療補償制度の適用範囲内で、

ある程度の再発防止効果、

原因究明効果はあったような報告が出ていますが、

適用範囲外では、

医療事故訴訟の問題点は、何の変化もありません。





これでは、大前提のもう一つの目的、

産科医不足解消や医療訴訟回避の効果は

望めないのではないでしょうか?





制度の適用範囲内で改善点を議論しても、

本当の問題点は見えてこないと思います。





最大の誤算は、

医療者は聖職者であり、

正しい行いをするという見解の下に

制度が作られていることではないでしょうか?





無過失補償にすれば、

医師は自ら事故を運営組織に

報告するだろうと思われているようですが、

そうではないことが明らかになったのではないかと思います。





そして、厚生労働省、その保険機構も含め

医療界が行ったことは、それぞれの事例で、

如何に制度の適用外かを証明しようとした

にすぎないといえるのではないでしょうか?





まさに加害者側の論理で制度が作られていると言えると思います。





医療事故の被害者の「5つの願い」

原状回復、真相究明、反省・謝罪、再発防止、損害賠償

これが、日本弁護士連合会の意見書では、

「事故を起こした医療者も被害者の

上記の願いと同じ願いを抱いていることも確認できた」

とありますが、私は疑問に思います。





今回の私達の医療事故での医療従事者の方々の対応は、

とてもそうとは思えない対応であることは、

このHPでお分かりいただけると思います。





そうである医療従事者の方々もいらっしゃるかもしれませんが、

心で思っていても何の行動も起こされないから、

産科医療補償制度の適用範囲外では、

医療訴訟問題の改善が全く見られないのではないでしょうか?





問題なのは、医療従事者の方々ご自身が、

なぜ、この産科医療補償制度ができたのか、

医療事故訴訟の何が問題なのかが、

全く分かっていらっしゃらないことではないでしょうか?





この被害者の「5つの願い」を医療界も

認識していらっしゃるのであれば、

試験的に始まった無過失補償制度ですから、

医療界全体をあげて、

取り組んでいかれるはずではないでしょうか?

せめて産科医の方々だけでも「5つの願い」が叶うよう、

取り組んでいかれるはずではないでしょうか?



「今社会問題化している医療崩壊なる現象が何かと言えば、

医療従事者に対する国民の信頼が

低下しているということに尽きるわけでしょう。」


これは、あるインターネットでの書き込みで見つけた文章です。





私達一般市民は医療従事者の方々に

完璧を求めているわけではありません。

人間ですから、完璧などあり得ないのです。

一生懸命やっていても、間違いが起こることは承知しています。



大切なのは、間違いが起こったとき、

どう対応していくかではないでしょうか?

医療事故が起こった時に、当事者はもちろん、

他の医療従事者の方々も我が事と捉え、

真実を明らかにし、原因を究明し、

再発防止につなげようという意識がないことが、

一般市民からの信頼を失くしているのだと私は思います。





医療界の巨頭体制を崩すことができないのなら、せめて、

事故が起こったときには、広く事故を公表し、

事例を出し合い、検討し合う、

医療従事者間の横のつながりを持たせること、

医療界ご自身に、

事故から学ぶシステムをつくることが大切なのではないでしょうか?







全ての医療事故に対して「無過失補償制度」を適用したとしても、

この医療界ご自身の意識が変わらなければ、

被害者の「5つの願い」

原状回復、真相究明、反省・謝罪、再発防止、損害賠償 で、

叶えられるのは損害賠償のみに留まるような気がしてなりません。