示談成立までの歩み その2 「弁護士事務所へ」




2010年1月28日





初めてお会いした弁護士さんは、開口一番、

「これは、医師は知らなかったのではないだろうか?」

と言われました。





そしてご自分達も、

もちろんカンガルーケア自体も御存知なく、

まして事故が起こっていることも知らなかったと。





私達の件で、事前に調べた結果、

カンガルーケアに対してWHOのガイドラインが2003年に出ているが、

そのガイドラインがどの程度の強制力を持つのか、

或いは産科医院側が恥じも外聞も捨てて、

カンガルーケアの事故報告も知らなかったと言い分を覆せば、

責任追及は難しくなるとも言われました。





医療事故裁判の争点になるのは、「医療水準」だそうです。

大学病院など最先端の医療を行っている所は知っていても、

一般の開業医までは浸透していない場合は、

病院側が無過失となるそうです。





後でわかったことですが、

『9.賠償責任審査会とは?』 でお伝えしているように、





裁判になれば、戦う相手は保険会社ですから、

何とか無過失に持っていこうと必死になるからだそうです。





弁護士さんですから、

今までの医療事故裁判の事例から、

あらゆる事態を想定して、

お話してくださっているのでしょう。





裁判費用についても、

負けたら相手の弁護士費用も払わなくてはいけない

などということはないと説明され、

ほっとしました。





また、浩太郎が搬送された時からの市民病院でのカルテを

入手するように言われました。





これは私達が既に事故を起こした病院のカルテを入手していたので、

浩太郎自身のカルテだけ入手することになったのですが、

通常はカルテ開示の要求書とか、

カルテを隠蔽されないための証拠保全申し立てとかを

事故を起こした病院側に要請するようです。





事前に返送していた事の次第を書いた紙だけで把握されているのか、

事故の詳細を聞かれるわけでもなく、

30分程度の説明の後、

やはり着手金は新聞社の方から聞いていた程度の額で、

委任弁護士として依頼するかどうか、

1週間後にもう一度出向くことを約束して帰りました。

その日の相談料は請求されませんでした。





夫は事故直後の12月下旬に初めての動悸が現れて以来、

処方された薬を飲んでいましたが、

時々、動悸に襲われていて、少し時間が経つと治まっているようでした。





この日も弁護士事務所を訪れる前、小さな動悸が始まっていて、

打ち合わせが終わり、事務所を出て、夕食を食べた後、

動悸が激しくなって、私の車で救急病院に連れて行きました。





救急病院に着いて、測定するためのモニターをつけると、

動悸が治まってしまうので、詳しいことはわからないですが、

血液検査の結果は問題ないと言われ、2時間ほどで帰宅しました。





その後も夫は何度か同じような動悸を繰り返しているらしく、

私は心配でたまりませんでした。





1月30日朝日新聞社の方が東京から来られて取材してくださいました。

2月1日rkb福岡放送から取材を受けました。





夫のストレスはピークに達したのでしょう。

2月2日 昼過ぎに夫が救急搬送されたと会社から電話がありました。





私は不安と恐怖で発狂しそうな心を、

「だいじょうぶ、落ち着いて!」と何度も自分に言い聞かせ、

義母の仏壇に手を合わせ、「どうか夫を守ってください」と懇願し、

タクシーで救急病院に向かいました。





付き添ってくれた会社の上司が、

どうやら過呼吸を起こしたらしく、

救急隊員の指導のおかげで、救急車内でずいぶん落ち着いた、

今は検査をしていると説明してくださいました。





1時間ぐらい待ったでしょうか、

夫は点滴をしていましたが、動悸も治まったらしく、

ほっとしました。

医師から、詳しい検査をした方がいいので、

明日また病院に来てください、

点滴が終われば帰ってよいとの事でした。





1時間ほどで点滴は終わりそうなのですが、

夫は一人で帰れるから、浩太郎の病院に行ってやってくれと言い、

私はまたタクシーで家に帰り、

冷凍している母乳を持って、浩太郎の病院に面会に行きました。





辛かった。

神様はどうしてこんなにも私達を苦しめるのか、

けれど、泣いても、わめいても、

逃げ出さず、私にできる事をやるしかありませんでした。





次の日の2月3日、夫は昼過ぎから病院に行き、

身体に動悸を測定するためのいくつもの電線をつけて帰ってきました。





それから二人で弁護士事務所に行き、

着手金を支払い、委任契約をしました。

訴訟費用は成功報酬ということで、

その後相談料を請求されたことは今までありません。





「まずは、「そちらの落ち度ですよ」という文書を産科医院に送ります」

とのことでした。

その受け答えが、なんとも言えない安堵感をもたらしてくれて、

ちょっとだけ肩の荷が下りたのでした。