あたりまえ




浩太郎が亡くなって、初めて浩太郎を家に連れて帰りました。





病院から自宅までの道すがら

車の窓から青い空が広がっていて、

浩太郎は初めて青い空を見ることができました。





浩太郎の為にあつらえて、

使うこともなく、しまっていた布団を出して、

初めて浩太郎を寝かせました。





しばらくしてお坊様が来られてお経をあげてくださいました。

その時、私達の様子をご覧になっていたのでしょう。





通夜のお経の後、

「あたりまえ」という詩を引用して、説法をしてくださいました。









あたりまえ





あたりまえ こんな素晴らしいことを

みんなは何故 喜ばないのでしょう



あたりまえであることを



お父さんがいる お母さんがいる

手が二本あって 足が二本ある 

行きたいところへ自分で歩いていける

手を伸ばせば 何でも取れる 

音が聞こえて 声が出る

こんな幸せが あるでしょうか 

 



しかし 誰も それを喜ばない

あたりまえだと 笑ってすます 

食事が食べられる

夜になると ちゃんと眠れ そして また朝が来る

空気を胸いっぱいすえる 

笑える 泣ける 叫ぶことが出来る 走り回れる

みんなあたりまえのこと





こんな素晴らしいことを

みんなは決して喜ばない

そのありがたさを 知っているのは

それを失くした人たちだけ

なぜでしょう あたりまえ







昭和54年1月1日 井村和清作

「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」より