公表について




事故当時、私達は示談や裁判などと、

こんな大事になるとは思ってもいませんでした。

だって産科医院は事故当初から非を認めているのですから。





「もしものことがあったら、出るとこ出ますけんね!」





私は夫のこの言葉でただ事ではないことを悟り、

それからはただただ私にできることを必死でやってきました。





一睡もできずに朝を迎え、その日から、午前、午後の2回、

毎日浩太郎のいる病院に夫と二人で通いました。

産科医院に戻ると泣いてばかり、自分を責めたり、

なぜこんなことに?と神を恨んだり・・・、

もっと早く診ていてくれたら、ここまで酷い状態にはならなかったのに・・・

と、眠れない夜が続きました。





そんな中、一生懸命、

私を元気づけようと明るく振舞っている夫を見ていて、

これからの人生を恨み辛みで生きていきたくはないと、

こうなったのには何か意味があるのだろうと自分に言い聞かせ、

産科医院側は非を認めているのだから、

浩太郎の呼吸がなぜ止まったのか、今はまだ原因がわからなくても、

他の産科医院でも同じように助産師の怠慢や、

体制の不備があるかもしれないから、

早く他の助産師や医師に注意喚起して、

このような事故を未然に防げるように、

同じように悲しい思いをする親御さんが増えないようにという思いから、

私の退院の日、院長に公表することを告げたのです。





当然、産科医院も同じ思いで、

自ら公表してくれるものだとばかり思っていました。





だって、交通事故や火事や殺傷事件など、

ニュースで流れているではないですか!?

ガス湯沸かし器や車の不具合による事故、

子どもが車のパワーウインドで指を切断する事故や

乳母車で子どもが指を挟む事故等々、

それが元気に生まれた赤ちゃんに危険が及んでいるのですから

早く公表して、世の中に注意喚起しなければならない!

と思うのは当たり前のことではないのですか?





ですが、医院側からは、公表どころか、

事故に関して、何の連絡もありませんでした。





前述の通り、私達は私の退院の日にカンガルーケアという言葉を初めて聞き、

その日の夜、久保田医師の学説に出会い、

さらに、これは早く公表しなければ、大変なことになる!と思い、

夫は新聞各社に事故のことを公表してもらおうとメールを送りましたが、

返事が帰ってきたのは数社のみでした。





暮れも押し迫っていたので、

明けて2010年1月初旬、二つの新聞社で取材を受けました。

ですが、カンガルーケアについての報道はできても、

事故の詳しい報道や医院の名前も出せないと言われ、

非常に驚き、落胆しました。





一般的に医療事故の場合、病院の名前を出せば、

その病院が廃業になる可能性があり、

新聞社側が訴えられる危険をはらんでいるからだそうです。





私には理解できませんでした。

なぜ、病院側は自ら公表しないのか? 

命を誕生させる産科医院でありながら、

このような重大なミスを犯していて、

その赤ちゃんの命が危険にさらされているのに、 この期に及んでも自身の医院の存続、勤務医や

助産師、看護師たち従業員の保障の方が大事なのか?と。





名前を公表したら、逆に病院側が新聞社を訴える!?

なんと図々しく、傲慢な考え方でしょうか!?

しかもそれがまかり通っている、

それがこの日本の医療界の恐ろしい現状なのです。

命を預かる聖職者と言われる人達のすることでしょうか!?





さらに、なぜそんなことがまかり通っているのかと、弁護士に問うと、

病院が廃業に追い込まれると、

そこにかかっている患者さんが診てもらえなくなる・・・、





たとえ事実であろうと、病院の名前を公表されたことにより、

患者が減り、収益が下がったとして、

名誉毀損で損害賠償訴訟される危険性がある・・・などと

補足され、弁護士でさえ、極当たり前の人間的な感覚がないのか!

と愕然としました。

それとも医療界の横暴さには、

弁護士も太刀打ちできないということでしょうか?





医療事故を隠して、何の問題もなかったかのように、

のうのうと患者を診ている病院に誰がかかりたいでしょうか?

医療へ対する信頼など持てるはずもありません。

恐ろしい限りです。





医療が難しいということは誰でもわかっています。

過酷な労働条件のもと、

一生懸命働いてくださっているのもわかっています。

けれど人間ですもの、間違いは犯さないと言うほど

医療従事者は愚かではないでしょう!?

間違いが起こるのも、ある意味仕方の無いことだともわかっています。





だからこそ、

命を預かる難しい医療だからこそ、

事故が起こった時には、一刻も早く公表し、

同じような事故を未然に防ぐように注意喚起することが

必要なのではないでしょうか?





公表すれば、一旦は患者が減るかもしれませんが、

こういう事故があった、これが原因だった、

これを改善するためにこのような対策をとっているとなれば、

むしろ病院への信頼は増すというものではないでしょうか?





命を扱う仕事は何も医療だけではありません。

一般企業でも、自らの失敗が、

人の命を奪うような大きな事故になるかもしれない

責任を背負って仕事をしています。

何かシステムに不具合が生じれば、

このような事故の公表は極一般的に一般社会ではなされていることで、

当たり前の事だと思います。





食中毒を起したレストランがそれを公表されたことで

廃業に追い込まれたとからといって、

逆に新聞社を訴えるなんて聞いたことがありません。





そのレストランの従業員は職を失いますが、

別のレストランの就職口を探すでしょうし、

シェフは自らの努力で、もう一度

一般市民からの信用を取り戻すのです。

それが当然です。



しかし、それが命をあずかる医療界だけは、違うのですか?!

体制の不備は認めるけれども、

事故が起こった原因までは責任はないと

原因究明をするどころか、

専門性を盾に医療事故とはまだ言えないと時間を稼ぎ、

カルテの改ざんまで平気でおこなって、医療従事者間で隠蔽し、

病院の廃業を逆手に取り、公表をしないことがまかり通るのですか?





これでは、名前を出したら訴えるぞ!と

医療界がマスコミや患者を脅しているのと同じでしょう?!

それでどうして医療従事者を信頼できるでしょうか?





久保田医師からの紹介で、

1月下旬から2月初旬に朝日新聞と産経新聞、

そして、rkb福岡放送に取材を受けました。





2月26日rkb福岡放送の夕方6時台のニュースを皮切りに、

3月3日、4月3日、4日 産経新聞、

私達の事故を受けてのカンガルーケア中の事故が公表されました。

もちろん、産科医院側は示談交渉中を理由に

名前はもちろんのこと何のコメントも出しません。





3月15日rkb福岡放送のがんばりで

系列会社のTBS放送が午後7時台のニュースで全国放送しました。

このTBSのニュースを、インターネットのニュースサイトJC-NETは

『カンガルーケアの危険性の報道について、

小林アナウンサーおよび製作したTBS関係者に拍手を送りたい』

と報道しています。

http://n-seikei.jp/2010/03/the-news.html

これがどういうことを意味しているのか皆さんおわかりになるでしょうか?!



また同じ系列のNBC長崎放送も4月8日、同じニュースを流しました。



4月7日 長崎新聞がもちろん産科医院の名前は出さずに

社会面に大きく取り上げてくれました。



一連の報道を見た長崎NCC放送が取材を申し込んできました。

4月23日夕方6時台のニュースで放送されました。

rkb福岡放送、TBSでは産科医院の建物ははっきりと映っていましたが、

NBC、NCCではぼかしてありました。





朝日新聞は一番早く取材してくださったのですが、

掲載されたのは、7月2日です。

取材はしてくださっても、報道してもらえなかった

新聞社、TV局もあります。

みなさんなぜだと思われますか?





報道各社も医療界に対しては

自主規制 をせざるをえないということでしょうか?

自らの危険を顧みず、報道してくださった各新聞社の方々、

TV放送局の方々にこの場を借りて御礼申し上げます。





5月の最後から6月にかけての1週間、

九州・沖縄各県のTV局でrkb福岡放送が製作した

30分のドキュメント番組が放送されました。

『胸の上の悲劇 〜カンガルーケアの功罪〜』

http://www.e-jnn.com/cgi-bin/vtemp.cgi?dir=onair/100531015000

これら報道があっても、カンガルーケアを推奨する医師や助産師は、

カンガルーケア中の事故はカンガルーケアとの

因果関係が明らかになっていないと言い張り、

人的・機器的監視、新生児蘇生に熟練した医療者による

管理をするようガイドラインを作成するだけで、

事故を未然に防ごうとはしません。





大事なのは赤ちゃんの命であって、カンガルーケアではないはずです。

赤ちゃんの呼吸がなぜ止まるのか!

『原因がわからない』からこそ、

先ずは公表して、未然に防ぐことが大切なのではないのですか?

『原因がわからない』から、

医療事故とは言えないと病院廃業を逆手に公表せず、

かといって、原因究明に乗り出すわけでもなく、

事故は繰り返されてきたのです。

これでは、公表しない理由が

他の患者さんを診られなくなるからではなく、

単に責任逃れであると思われても弁解の余地はないでしょう。





私達が初めての事故じゃないのです!

浩太郎が産まれる日の朝、

毎日新聞に4年も前に私達と全く同じ事故が

起こっていた記事が掲載されています。

カンガルーケア報道

しかし、いくら公表をしても、

当の現場の医師や助産師、看護師が我が事と捉え、

自分を律することができなければ、何の意味も持ちません。





6月27日 長崎新聞が『出産現場に事故が警鐘』と

題して記事を掲載しています。

http://www.geocities.jp/southsweel/KOUTAROU25.html

その中でカンガルーケアをめぐり

ガイドライン作成にも携わった周産期母子医療センターの新生児科医師は、

なんと浩太郎の事故はカンガルーケアとは別物と言い、

その結果、カンガルーケアはskin to skin contactと名称を変え、

各施設さまざまなやり方で続行されています。

しかも、人的・機器的監視がなされているかどうか定かではありませんし、

新生児蘇生に熟練した医療者による

管理は実質的には不可能であるにもかかわらずです。





7月31日〜8月1日、母乳育児推進の学会が仙台で開催され、

rkb福岡放送と産経新聞社が取材に行かれました。

なぜかテレビ取材はお断りだったそうで、

他のテレビ局の方は取材を断念されました。





その学会の中で、医師や助産師は、

カンガルーケア中の事故はカンガルーケアをしても

していなくても起こっていたのではないか、

事故は野原で赤ちゃんを産んだのと同じことが起きているだけで、

医療の場ではないと言ってのけています。

これが命を預かる医師の、助産師の言葉でしょうか?

信じられますか?





1万人に一人なら、自然の摂理として淘汰されてしかたないのですか?

千人に一人? 

百人に一人?

50人に一人?

いったい何人の被害者がでたら、医療事故と認め、

原因究明に乗り出すのですか?





2011年1月3日、このHPへの書き込みで、

またもカンガルーケア中に赤ちゃんの呼吸が止まる事故が

起こっていることが判明しました。

私達の事故から1年も経った2010年12月12日のことです。

  赤ちゃんにモニターもつけていませんし、助産師も医師も不在です。

カンガルーケアに対する事前説明もありませんでした。





苦しみを堪え、なんの為に、報道してもらったのか!





これだけの報道が行われたにも関わらず、

カンガルーケアを推奨する医師や助産師は、

カンガルーケア中に赤ちゃんの呼吸停止に至らせたのですから、

この責任は重大だと思います。





12月3日 産科医院側が非を認め、やっと示談が成立しました。

それでも産科医院自ら公表することはありません。





12月30日 産経新聞が私達の事故で示談が成立したことを掲載してくれました。

12月31日 rkb福岡放送が『揺れる分娩室〜母乳信仰の光と影〜』と題して、

これまでの取材をまとめ、1時間のドキュメント番組を放送しました。





悲しいかな、さらなる被害は免れませんでした。





他の病院での医療事故が報道されているのに、

医療従事者は全くの他人事かの如く、

わが身を律することはせず、

当然、事故を公表することもなく、

平然と何事もなかったかのように診療をする。





私は医師や助産師、看護師が

恐ろしくてたまらない心境にかられました。

もはや医療従事者に対する不信感を打ち消すことはできません。

それが一般の人間の当たり前の感情であることを

医療従事者の方々は認識していただきたい。





カンガルーケアや完全母乳、母子同室などにおける

これら赤ちゃんの呼吸停止の医療事故には、

権威ある医師に物言えぬ

医療界の巨頭体制、隠蔽体質、医療従事者の傲慢や怠慢など、

日本の医療界がかかえる問題が背景にあると思います。



もちろん良識のある医療従事者がおられることは承知しています。

ですが、
一握り の非常識な医療従事者によって、

日本の医療への信頼は衰退しています。

このままでいいのですか?

良識ある医療従事者が怒り、嘆くだけでは事態は変わりません。





では、誰が変えてくれるでのすか?

行政ですか?

被害者ですか?





医療従事者、あなたがた以外にいないのです。





非常識な医療従事者を変えようと思っても不可能なのではないでしょうか?

事故が起ったときには、

医療従事者側に非があろうとなかろうと、再発防止のために、

先ずは速やかに公表すること、

きちんと原因を調査する組織、

医療過誤の当事者の責任を償わせるシステム作りが必要だと私は思います。