発達障害急増の要因=遺伝説に疑問、福岡市議会で論争





2013年3月21日 NET-IB News




発達障害児が急増した要因は何か――。

21日、福岡市議会の予算特別委員会で、高山博光市議(城南区)は、

子ども未来局長および保健福祉局長に問い質した。




高山市議が質問の根拠としたのは、

2007(平成19)年度の福岡市立こども病院・感染症センターの

「年報VOL.28」に掲載されている「福岡市の発達障害児の実態調査」。

この調査は、こども病院小児神経科3名と、福岡市立心身障がい福祉センター小児科、

同・西部療育センター小児科の各1名、計5名の医師によって作られた。




同調査は、2006(平成18)年から1988(平成元)年までさかのぼり、

両センターを初めて受診した子どものカルテを検討して行なわれた。

その結果、「発達障害が大幅に増加していたこと」と、

「理由が明らかではないが」とした上で、

「発達障害児の発生頻度に病院で差があること」などがグラフ(表1)とともに報告されている。




報告のなかで、同じく発達障害が増加しているアメリカでは、

「(発達障害への)注目度と診断技術の向上、障害児施設へのアクセスの改善」が

急増の原因として挙げられていることに触れている。

また、「発達障害が病院の規模や周産期障害の重症度の差とは関係ない遺伝的背景を持った集団であり、

これを新しい診断基準で掘り起こしていると判断するのが最も妥当」と書かれてある。

つまり、発達障害の急増の原因を「遺伝」と「診断基準の変化」として片付けているのである。




<隠された?「結語」>

しかしながら、「理由が明らかではないが」として報告された2つの個人病院における発生頻度が

最大6倍も開いていたデータについては、

福岡市立こども病院の「年報」に掲載された内容を見る限りいまいち要領を得ない。

なぜならば、本来あったはずの「結語」の部分が欠けているからだ。




以下、NET-IBが入手した、

日本小児神経学会(08年4月)で発表された内容に含まれていた同調査の「結語」を紹介する。




【結語】

1. 福岡市における心身障害児の発生数の変化を発達障害児に注目して、

平成元年から18年までその推移を後方視的に調査し、

過去5年と最近の5年の二群間で比較し集計した。

2. 過去15年で精神遅滞は増加、発達障害は大幅に増加していた。

3. 発達障害児の発生頻度に分娩施設間で差がある事がわかった。

4. 幼児期以降の発達予後の情報を産科と共有しさらに詳細な検討が必要であると考えられた。




重要なのは4番目。

現場である産科と情報を共有し、さらに詳細な検討が必要とされた点にある。

発生頻度が低かった「個人病院B」とは、福岡市中央区にある久保田産婦人科麻酔科医院と考えられる。

同医院の久保田史郎院長は、1993(平成5)年から厚生労働省によって

出産時の医療の主流とされた『完全母乳哺育』について、

「栄養不足」「体重減少」「水分不足」を招く恐れがあると当初から疑問を感じ、

完全母乳哺育で禁じられた糖水・人工乳による新生児への栄養補給を継続。

なお、久保田医師は、1983年の開業から約1万1,000人の出産に携わっている。

非主流派・久保田産婦人科麻酔科医院と「個人病院A」では、

出産後の医療の内容に違いがあるのではないだろうか。




<止められない増加>

 発達障害児の急増を「政治として避けては通れないマター」とする高山市議は、

産科と情報を共有した上での調査を行なったかどうかについて質問した。

「福岡市独自で産科と協力した実績はない」と答えた保健福祉局長。

さらに発達障害者支援法で、発達障害に関する調査研究の役割を国にあるとした第24条を根拠に、

発達障害急増の原因について「国の知見を待つ」など答弁した。




かねてから市議会で発達障害急増について取り上げてきた高山市議は、

「知見を待つと言って早6年。この間に福岡市の発達障害児は信じられないほど急増している」(表2)と、

憤りを隠さない。原因不明ということは、今後も発達障害が増えていく可能性があるということだ。

久保田医師は、「3年後、福岡市では年間1,000人を超えるのではないか」と、予測している。




地域によって発達障害の診断数に差があるという事実もまた遺伝説に疑問を投げかける。

表3は、広島市が実施した他政令市との比較。

枠外に久保田医師が参考として福岡市(2011年度)のデータを並べた。

2004(平成16)年度のデータ(川崎市のみ03年度)において、発生率に地域差があることは一目瞭然。




出産の医療の現場から警鐘を鳴らす久保田医師は、急増の原因について、

産後の不適切な体温管理による低体温症と栄養不足が招く低血糖症にあるとして、

そのメカニズムや根拠となるデータ(表1〜3)を病院HPや講演などで解説している。

NET-IBでは、久保田医師の協力を得て、その説について今後紹介していく。




(つづく)


【山下 康太】




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