新生児母乳育児 母子管理万全に






2012年1月21日 東京新聞



母乳による新生児育児が広がっている。





新生児の免疫力を高めたり、

肌の触れ合いで絆を深める利点があるからだ。

だが、母乳が出にくい母親もいる。



母子の管理の問題と相まって、

新生児に障害が残ったと提訴するケースも起きている。

母乳育児には母子の健康状態の監視が欠かせない。 (細川暁子)





東京・広尾の日本赤十字社医療センター。

年間約二千九百人生まれる新生児のうち、八割超が母乳で育つ。

ミルクを使う産科施設が多い中で、

同センターは母乳育児を推奨し、できる限り母乳以外は与えない。



ただ、それには出産前からの準備が必要だ。

母乳育児について、妊娠中の母親に説明。

妊婦健診時から、産科医や助産師が乳房チェックやマッサージで、

母乳を出やすくするケアも提供している。



母乳育児で重要なのは、新生児が母乳を飲んでいるかの確認だ。

体重や尿の回数などをチェック。

体重が10%以上減れば、血糖値を検査する。

低血糖や脱水症状などの兆候や、母親の健康状態によっては、

糖水、ミルクの順に足していく。







「赤ちゃんは、二日間母乳を飲めなくても

持ちこたえる蓄えを持って生まれる。

ただし、感染症などがあれば別。

それを早く見つけるのが医療者の仕事だ」。

周産母子・小児センター長の杉本充弘医師は話す。





「母乳育児」は世界的に推奨されている。

世界保健機関(WHO)と国連児童基金(ユニセフ)が

一九八九年に示した「母乳育児成功のための10カ条」。

その中に「医学的に必要でない限り、母乳以外の栄養や水分を与えない」

という項目がある。



「10カ条」を守る産科施設は、ユニセフから委託された

「日本母乳の会」が「赤ちゃんにやさしい病院(BFH)」に認定。

九一年に一カ所だったBFHは現在、六十二カ所まで増えた。





だが、昨年十一月下旬、 母乳育児の難しさが浮き彫りになる“事件”があった。

「子どもに障害が残ったのは、

出産直後に母乳育児に固執した上、母子の管理を怠ったためだ」として、

九州のBFH認定病院の運営母体が提訴されたのだ。

原告の母親(40)=横浜市=は「母乳はまったく出なかった」と主張している。





これについて、杉本医師は

「医師や助産師が赤ちゃんの健康状態を見極める能力には差がある。

不十分だと、不幸な事例が起きかねない」と指摘する。



特に、母親が三十五歳以上で初産の場合には注意が必要という。

同センターの調査では、母乳中心に育てる「母乳率」が

二十代で九割なのに対し、三十代は八割、

四十代になると七割にまで減ることが明らかに。

こうした「加齢と母乳」についての議論は、

これまであまりされてこなかったという。



同センターでの出産は45%が三十五歳以上で、

杉本医師は、「不妊治療の普及で母親の年齢が上がっている。

母乳育児にも“適齢期”があることを、考慮すべきだ」と話す。



関西医科大学の金子一成教授(小児科)も、

母乳のみの新生児の育児は脱水症の危険性を伴うと指摘する。

「母乳はどれだけ飲んだか目に見えない。

母乳だけにするなら、病院は責任を持って母子を管理すべきだ」と主張した。









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