カンガルーケアの危険情報(某HPより引用)
(Infant Safety Net 乳幼児の安全ネットワーク より引用)
What is forbidden?
(カンガルーケアの実施にあたって)
禁止されていることは何であるか
To lay the infant horizontally
それは赤ちゃんを水平にすることである
上の注意書きはカンガルーケアを創始し、この技法に関し世界各国からの研修生を受け入れ教育してきた
コロンビアの Fundacion Canguro がいくつかの注意事項の筆頭に掲げているものです。
ここには北米や欧州からも多くの研修生が来たことがうかがえますが、
日本から研修に行ったグループがあったのかどうかはわかりませんでした。
願わくば「カンガルーケアとは肌と肌を密着させるだけ」との単純な認識のもと
カンガルーケアを実行した日本の施設がなかったことを祈るばかりです。
WHOのカンガルーケア解説(英文)を見ますと親が子供を立てて抱いている絵があります。
これがカンガルー・ポジションです。
このような姿勢をとることが無理な場合でもカンガルーケアを実施するにあたっては、最低限、
母体はファーラー位 (下図)をとることが必要です。
Googleの画像検索を使って 日本のカンガルーケアのイラストや写真を何ページかにわたって見ていきますと
「これは絶対にカンガルー・ポジションではない」という例をいくつも拾い出すことができます。
英語版のgoogleで検索した結果と比べてみてください。
出産直後で疲労困憊した母体を水平にし、その上に赤ちゃんを置くことは
ウォーターベッド上のうつぶせ寝と変わるところがありません。
ウォーターベッド上のうつぶせ寝が危険であることは専門家にとっては常識であるはずですが、
これは何としたことでありましょうか。
母体を水平にし、その上に赤ちゃんを置く体位は「カンガルー・ポジション」ではなく
「ウォーターベッド・ポジション」と呼び、その危険性を広く周知させる必要があります。
このような状態で初回から専門家が、その場から立ち去るなどというのはもってのほかです。
WHOの資料では risk of apnoea (赤ちゃんが無呼吸に陥る危険)と
risk of smothering (赤ちゃんを窒息死させる危険)をあげて対策を指示していますが、
このふたつのリスクコントロールはカンガルーケアを実施するにあたって必須のものです。
カンガルーケアKangaroo Mother Care (KMC) は、もともと保育器の不足する発展途上国において
母体を保育器代わりに使い未熟児の救命率を劇的に改善する手法として構想され普及したものです。
医療水準の高い国々では病院の集中治療室(NICU)を中心に導入がはじまりました。
この段階では危険対策も高度なものがあったと思われますが、最近、普通の産院において
危険への対策を怠ったカンガルーケアが広く見られるようになっています。
カンガルーケアは、周産期の様々な危険性についての知識がない素人に
赤ちゃんをまかせ医師や助産婦がその場を離れる状態で産後すぐに開始されるならば、
カンガルーケアを使わない場合に比べて 赤ちゃんにとってのリスクを確実に上昇させるものです。
医療水準の高い国々ではカンガルーケアは発展途上国における赤ちゃんの死亡率の低下という
メリットがないばかりでなくしっかりとしたリスクコントロールを怠るならば新たな危険を生み出すことになるのです。
近くの部屋に医師がいたとしても、医師による対処のわずか数分の遅れが、その子の運命を左右します。
人類は長い間、産後まもなく死んでしまう子供たちに悩んできたことを忘れてはなりません。
リスクを考えることなく実施されるカンガルーケアが蔓延するならば、
われわれの社会がせっかく長い年月をかけて達成してきた産後の安全がおびやかされることになりましょう。
おそろしいことに、リスクコントロールがなかったカンガルーケアが民事裁判において
免責されるケース(大阪地裁)がでてきました。
死亡や重度障害につながるようなとんでもないカンガルーケアを実施した施設が免責されますと、
結果的には間違ったカンガルーケアを司法が支持してしまうことを意味します。
(この後、千葉地裁が安易なカンガルーケアに対してきびしい判断を示したとのことです。
カンガルーケアを責任転嫁に使うことの不法性をかなり明白に指摘したようでもあります。
くわしいことがわかりましたら報告します)
参考資料
KMC rules / practical guide lines by the Kangaroo Foundation
Fowler's Position ファーラー位の図解
やわらかいベッドによる赤ちゃんの死亡を防ぐための
To prevent infant deaths due to soft bedding
米国の政府機関、小児科学会、国立研究所の三者による勧告
Safe Bedding Practices For Infantsに並んでいる注意事項の最後の項目...
Do not place baby on a waterbed , sofa, soft mattress, pillow, or other soft surface to sleep.
(睡眠をさせるために赤ちゃんをウォーターベッド、ソファ、柔らかいマットレス、枕、
あるいは他の表面が柔らかいものの上に乗せてはならない...ここで想定されている体位は水平です。
このページの最初にかかげた「水平は禁止」という部分に通じています)
南アフリカのカンガルーケアとなると見事なまでにカンガルー・ポジションが見られます。
コロンビアと南アフリカはカンガルーケアの国際会議 Uppsala 2008 をリードする存在でもあるようです。
インドの KMC Initiative は専門家による母親や家族へのガイダンスやサポートが
カンガルーケア実施にあたっての要件としていますが、わが国のNICU以外のカンガルーケアで、
このような配慮が不足している施設は明瞭に認められます。
KMC Initiative India (英文)
The two pre-requisites of KMC are:
Support to the mother in hospital and at home:
A mother cannot successfully provide KMC all alone.
She would require counseling along with supervision from care-providers,
and assistance and cooperation from her family members.
Post-discharge follow up:
KMC is continued at home after early discharge from the hospital.
A regular follow up and access to health providers for solving problem are crucial to ensure safe
and successful KMC at home.
(訳)カンガルーケアの2つの前提条件は以下の通りです。
(1) 病院でも家でも母親へのサポートが行われること。
母親が単独でカンガルーケアを成功させることは不可能です。
専門家からの指導と監督は必須です。
家族の協力と援助も必要です。
(2) 退院後のフォローアップ
カンガルーケアは早期の退院が行われ、家でも継続されます。
専門家はいろいろな問題を解決するため退院後も常に接触しなければなりません。
それが安全を確保しカンガルーケアを家庭でも成功させるための鍵なのです。
追記
カンガルーケアの危険情報は、90年代の「うつぶせ寝をやめよう」という運動 (Back to Sleep Campaign) とは異なります。
カンガルーケアをなくすことを目的としているのではありません。
注意深く実行されるカンガルーケアを、むしろ支持するものです。
(Infant Safety Net 乳幼児の安全ネットワーク HPより引用)