恐ろしい医者の本音
始まりは、2010年6月27日発刊の長崎新聞の
【出産現場に事故が警鐘(再発防止へ広がる取組み)】
という記事の中で、一人の医師のコメントからでした。
そのコメントとは・・・・
『長崎市の事故について当時の状況など情報を集めたが、我々が進めているカンガルーケアとは全く別物と言っていい。
この事例を元にKCの危険性について騒ぐのはナンセンスだ。』
こうおっしゃる、この医師は、実際に国のKCのガイドライン作成に携わった医師なのです。
これを読んだ私は、さすがに逆上して、御本人にメールしました。以下が私のメールです。
私は長崎市在住の○○と申します。
実は、去年12月に私の息子がカンガルーケア中の事故に合いました。
その事が先日の6月27日付けの長崎新聞に載りました。
この記事の中で貴院の△△氏 のコメントが以下の様に記載されております。
『長崎市の事故については、我々が進めているカンガルーケアとは、全く別物。
この事例を元にKCの危険性について騒ぐのはナンセンスだ』
△△氏は、本当に医療従事者なのでしょうか?
同じ様な事故が全国で起きている事も認識されているはずです。
全国の産科医でKCのやり方が全然違うのも認識されているはずです。
赤ちゃんの容態が急変する事も、KCは安全性に留意する必要がある事も認識されているはずです。
しかも、御自分はKCのガイドライン作成に携わったわけですよね?
だったら何故?
『長崎市の事故については、我々が進めているカンガルーケアとは、全く別物。
この事例を元にKCの危険性について騒ぐのはナンセンスだ』
などと平気で言われるのでしょうか?
同じ医療従事者として責任を感じ、何故、全国の医療従事者にガイドラインを通達し徹底させないのですか?
徹底されないから事故が起きるのです。
徹底されないのは、事故を起こした病院だけの責任ではなく、医師会や医療従事者全員の
責任でもあるのではないのでしょうか?
あたかも、自分は事故をおこしていないので、今回の事は
まったく関係無い様な、他人事のコメントとしか思えません。
本当にガイドライン作成に携わった方なのですか?
だったら、なぜ、このようなコメントをする前に、きちんとガイドラインを全ての医療従事者に
徹底させないのですか?
△△氏らが徹底させないから事故が起きるのです。
何のためのガイドラインなのですか?
ガイドラインを作成したら、それで仕事は終わりなのですか?
御自分で携わって作成されたガイドラインを一刻も早く全国の産科医・小児科で徹底させるようにして下さい。
どうか宜しく御願い致します。
そうしている間にも事故に合う御家族は増え続けているのですから。
このメールに対して、医師から以下の返事が来ました。
○○さんは私が全国の産科医でKCのやり方が全く違うのを認識しているはずだとお書きですが、正常分娩におけるKCは
「出生臍帯結紮後に母と子が直接肌と肌を合わせて抱っこするカンガルー抱っこ」であるという大原則は揺るぎません。
いつから始めるか、いつまで続けるか、どういうお子さんまで対象にするかなどで様々なバラエティがありますが、
前述の大原則は必ず守られています。
長崎では違うと言われればそれまでですが、おそらくあなたがかかられた産院では
便宜上ご家族に説明する際にKCという言葉を使っていたのではないかと推測します。
以前我々の仲間が行った全国調査でKC(これは今回の長崎のケースとは違い本当のKCです)をやっている最中の
急変例を調べたら16例いました。
これは看過できないと考えあらゆるところで啓蒙活動をしてきましたが、
マスコミが誤解してセンセーショナルにかき立ててしまい事態を混乱させてしまいました。
どういう事かというと例えば全国のTOYOTAユーザーにアンケートを取って昨年交通事故を起こしたことがあるかの
全国調査をすればおそらく何千件も集まるでしょうし中には死亡や重体例もいるでしょう。
それを新聞が嗅ぎつけてTOYOTAでこれだけ重篤な事故が!!と書き立てて、
読者もけしからんTOYOTAをつぶしてしまえと行動を起こし、TOYOTAがつぶれれば
日本からTOYOTAの交通事故は無くなりますが、交通事故自体はなくなりません。
お判りになっていただけますか?
そういうこともあって私は今、学会の仕事としてKCの有無に関わらず出生直後の赤ちゃんが
どれだけ急変しているのかの全国調査を行っている最中です。
○○さんのお子さんがKCでもないのに急変されたことでもおわかりのように生まれた直後の赤ちゃんは
(もっと言えば生まれた直後の全ての生き物は)非常に不安定であり
今の医学のレベルを超えて急変してしまう事がある一定の割合で必ず起こります。
○○さんはおそらくもっと早く何とかしてもらえば助かったはずだと信じ切っていると思います。
勿論その可能性はゼロではありませんが、我々の病院のように新生児蘇生に熟練した医師団がいる病院ですら
目の前で急変してすぐ蘇生を開始しても手の施しようもないほど急速に悪化してしまうケースは
決して少なくないという事実も知っておいて下さい。
そして世界中で生まれている殆ど全ての赤ちゃんは新生児蘇生チームなどいない環境で生まれているのです。
これは日本全国の一般産科クリニックも含みます。
さらに日本の医療制度の中では新生児は病人ではなく母親の付属物扱いとされています。
病院看護師の数は病院のグレードにより患者何人あたり看護師一人という取り決めがされていますが、
新生児は付属物であって病人ではないので専任の看護師・助産師を付けることが出来ないのです。
どんな体制を作っても自然界で生きている以上新生児の死亡をゼロにすることは出来ません。
ただそうでなくても今の日本の新生児死亡率は世界の中では奇跡的に低いのです。
でも、しっかりした体制を作ることでさらに助けることが出来る赤ちゃんを
1人でも増やすべく皆で努力しているところです。
この、医者として患者を上から目線で見ているようなコメント。
あまりの医者側の都合での言い分に、再度、私は以下のメールを出しました。
早速の御返事有り難う御座います。
また突然の不愉快なメールで申し訳御座いませんでした。
△△先生より以下のコメントを頂いておりますが、
正常分娩におけるKCは
「出生臍帯結紮後に母と子が直接肌と肌を合わせて抱っこするカンガルー抱っこ」であるという大原則は揺るぎません。
いつから始めるか、いつまで続けるか、どういうお子さんまで対象にするかなどで様々なバラエティがありますが、
前述の大原則は必ず守られています。長崎では違うと言われればそれまでですが、おそらくあなたがかかられた産院では
便宜上ご家族に説明する際にKCという言葉を使っていたのではないかと推測します。
私達の場合は、やり方が違うから、それはKCではない。
だからKCについて問題視するのはおかしい(ナンセンス)っと申されますが
今回の私どもの事故をマスコミ各社で報道して頂き、全国の同じ事故に合われた御家族より多数御連絡を頂きました。
去年だけでも事故に合われた方々が10名近くおられます。
そのすべての御家族の共通点は、
1)出産直後の赤ちゃんは元気で何も問題無いと言われた。
2)病院側からカンガルーケアの説明どころか、名前すら聞かされていない。
3)ケア中に、分娩室から医療従事者が全ていなくなり、子供と母親だけで監視すらしていない。
4)ナースコールが手に届く所に無かった。
5)事故後、蘇生処置すらしてもらえなかった。
などです。
△△先生は、大原則は守られているとおっしゃいますが、現実には全国の各病院でKCのやり方がバラバラで
△△先生のおっしゃる大原則が守られていないのが現状なのです。
ほとんどの医師が先生が言う大原則など理解せず安易にKCと思い込んで実施しているのが現状なのです。
私が声を大きくして言いたいのは、そこなのです。
私も、カンガルーケア、そのものが悪いとは思っておりません。
やりかたに問題があると申しているのです。
ですから、ガイドライン作成に携わられた△△先生に
(たまたま今回の事で、△△先生を知ることになったので矛先を△△先生に向けるのは間違いなのは
重々把握してますが誰に御願いすれば良いかわからないからです)
その様な立場にあられるのでしたら、この事実を全国の全部の産科医・小児科医で、
△△先生がおっしゃる大原則を守るよう、なんとかして頂きたいのです。
現在の産科医でのカンガルーケアは、入院時のサービスの一つ(流行)として
安易に(モニターもつけず、蘇生処置ができる医師も不在の状態で、しかも
ケア中は医療従事者は無人状態)で行なわれているのが現状です。
私達家族は、病院側の安易なやり方でも医者からKCと言われれば、これがKCなのだと思ってしまいます。
△△先生が言われる大原則が守れないのであれば、安易なKCは行なって欲しくないのです。
その事に対して、私達夫婦は警鐘を鳴らし、マスコミに訴えているのです。
そこで、△△先生にも、医療従事者としての立場からなんとか、
△△先生が言われる大原則を全国の全部の産科医・小児科医で徹底して頂きたく御願いのメールをさせて頂きました。
御多忙中、申し訳御座いませんが、全国の今後生まれて来る
赤ちゃん達を安全な状態で生まれてくる環境を是非、作って上げて下さい。
私達は、現状が改善されるまでは世の中へ訴え続けて行きます。
どうか宜しく御願い致します。
さてさて、そしたら、また今度も完全に上から目線でのコメントが返ってきました。
○○さんが抱えておられる様々な誤解が少しずつ見えてきましたが、
これを1つずつほどいていく作業は正直言ってしんどいです。
それに私達が目指している方向は○○さんが望んでいる方向ととそう大きくは違っていないと思いますので
あまり細かいことを言うのは止めておきます。大きなところで2-3点だけ書きます。
まず日本中でいろいろな施設が安易にKCを行っている点、 おっしゃる通りです。
それは多くの場合、「裸の赤ちゃんを母親の上に乗っけて後は放置。」です。
この現実に危機感を持っているからこそガイドラインも作り、様々な調査も行い、これからも少しでも
改善する方向に持って行くつもりでいます。
ただその前にKCの有無に関わらず新生児と母親には最低限これだけはしましょう
というアピールを作っていかなければならないと思っています。
これは○○さんのケースに当てはまります。
○○さんも含めて一部の医療人はKCを何か特殊な治療だと思われているようですが、
生まれた赤ちゃんをお母さんに抱かせること自体はごく当たり前のことで
親の同意とか特別な説明が絶対必要なものとは思えません。
太古の昔から生まれたばかりの赤ちゃんは何らかの形で必ずお母さんが抱っこしてきたのです。
引き離したままで母親に近づけない方がはるかに不自然です。
ただ着衣の抱っこでは寒冷地など環境温度によっては赤ちゃんが低体温になる可能性もありますから
skin to skinのKCが推奨されました。
で、その結果として肌と肌を合わせることで得られる様々な効用や安全性が世界中のいろいろな研究者の報告で
わかってきて推奨度が大幅アップして来た経緯があります。
KCをしなかった時代、 多くの赤ちゃんは着衣でコットに寝かされるだけです。
勿論モニターは付いていませんしズラッとコットの並んだ新生児室には専属看護師はいないことが多いか、
いたとしても1人で急変に気付くはずもありませんでした。
私はKC推進論者ですがKCをするかしないかは問題にしていません。
コットにいようが母の胸の上にいようがしてあげなければならないこと、
あるいは今の社会の現状で出来そうなことを模索していくだけです。
○○さんのメールで気になったのですが赤ちゃんが何かあった場合に適切な蘇生がなされていない?
○○さんのご施設が特別に悪いのではなく世界中の殆どの産科クリニックでは充分な蘇生処置は出来ません。
クリニックどころか殆どの大学病院や総合病院ですら24時間常時”適切な蘇生”が出来るスタッフを配備することは
現状では不可能です。
そんなことが出来る施設は各県にゼロから数か所あるかどうかでしょう。
信じられないかも知れませんがそれが現実です。
それでもこの日本の分娩状況は世界の中では信じられないくらい整備され恵まれている方なのです。
適切な蘇生が出来るためには私達一部のエキスパートのように日常的な蘇生の経験が必要です。
今私達は分娩に関わる全ての人が「最低限の」蘇生技術を習得していただくために精力的に蘇生講習会を開いています。
でもいくら教科書や人形を使って勉強練習したって望まれているような「適切な」新生児蘇生はできないでしょう。
実際にフルに蘇生が必要な分娩は多く見積もって100件に一件程度。
しかも多くの場合危なそうな分娩は事前に予測できていてしかるべきセンターに送られますから
一般のクリニックで予期せぬ急変にぶつかる機会は数千分娩に一件あるかどうか。
産科医や助産師がその長いキャリアの中で果たして何度遭遇するか。
○○さんがイメージしているような適切な蘇生など出来るはずもありません。
逆に蘇生を日常的に何度もやっているクリニックがあったとしたらそんな危なっかしいクリニックでは
お産をしない方がいいです。。。
しかも前のメールでも書きましたが残念なことに仮に適切な蘇生をしたとしても○○さんのお子さんに起こったような
事態を好転させることが出来るかというと個人的な感想としてははなはだ心許ないです。
医学はかなり進歩しましたが自然の摂理の中ではヒトはあまりに無力です。
現状を少しでもより良い方向に持って行くための努力を止めるつもりはありません。
そのために全国の多くの仲間が何度も手弁当で集まって話し合い、調査をし、
体制改善を画策し、地道に蘇生講習会を開いてきましたしこれからもしていきます。
私を含めて多くの仲間が個人的には何の報酬もメリットもないこの事のためにプライベートの時間を削り、
心血を注いでいます。その事をご理解下さい。
最後に1つ、どうしても腑に落ちないのですが、○○さんは事前にKCをするという説明も受けていないし、
実際に行われたこともKCとは全く別物。
一体いつどこで誰からお子さんがKCを受けたという刷り込みをされたのでしょうか?
まったく医者の都合です。まずは、これ、
『生まれた赤ちゃんをお母さんに抱かせること自体はごく当たり前のことで
親の同意とか特別な説明が絶対必要なものとは思えません。』
自然界の動物や昔ならわかりますが、現在は、すでに、生まれたばかりの赤ちゃんは
上手に呼吸ができず、危険性があるとわかっているわけですよね。
それなのに、こう言う事をおっしゃるわけです。
いきなり抱っこさせるのではなく、赤ちゃんが完全に落ち着くまでは抱っこさせてはいけないのではないでしょうか?
また、こういう事を医者本人が、患者側の私達に、はっきりと言うわけです。
『世界中の殆どの産科クリニックでは充分な蘇生処置は出来ません。』
正直、恐ろしくなりました。
逆に、私は、医者が蘇生処置をできないなんて、今回始めて知りました。しかも
『そんなことが出来る施設は各県にゼロから数か所あるかどうかでしょう。』
全国の医者がなのです。本当に恐ろしい事です。そして、もっと恐ろしい事は・・・
『実際にフルに蘇生が必要な分娩は多く見積もって100件に一件程度。
しかも多くの場合危なそうな分娩は事前に予測できていてしかるべきセンターに送られますから
一般のクリニックで予期せぬ急変にぶつかる機会は数千分娩に一件あるかどうか。』
一件でもあれば、大事のはずです!
その大事に対応しようとしない、このコメント。
100件に1件か、数1000に1件の割合の為に、蘇生技術を身につける必要は無いと言っているようなものです!
そして最後は、なんとも情けないコメント・・・・
『そのために全国の多くの仲間が何度も手弁当で集まって話し合い、調査をし、
体制改善を画策し、地道に蘇生講習会を開いてきましたしこれからもしていきます。
私を含めて多くの仲間が個人的には何の報酬もメリットもないこの事のために
プライベートの時間を削り、心血を注いでいます。』
このような事など、私達サラリーマンなら、至極当たり前の事で、日常茶飯事のことです。
それを、あたかも、言い訳のように・・・・・
とどめは・・・・
『一体いつどこで誰からお子さんがKCを受けたという刷り込みをされたのでしょうか?』
刷り込まれたなんて、言いますか?
事故が起きた後、家内が退院する時に、看護師長が「カンガルーケア中に・・・・・」っと言ったから
家内が、「カンガルーケアって何ですか?」っと聞いて初めて知ったわけです。
これらのやりとりで、私は今後、何を信じて、誰に命を預ければ良いのかわからなくなりました。
今の世の中、医学は進んできましたが、医者個人の医術や、医者としての意志は昔以上に
低下しているのではないでしょうか?
非常に恐ろしくなりました。